センターについて

概要

腸内細菌療法リサーチセンター(Gut-Link Lab)は、腸内環境の乱れ(dysbiosis)が多様な疾患の発症や治療反応に深く関わることが明らかとなってきた現代医学において、その治療的介入法として注目されている「腸内細菌療法(特に腸内細菌叢移植:FMT)」の研究と臨床応用を推進するために設立されました。
本センターでは、潰瘍性大腸炎をはじめとした炎症性腸疾患の治療法開発にとどまらず、がん免疫療法や神経変性疾患への応用など、診療科の枠を越えた疾患横断的な臨床研究を展開しています。また、腸内細菌叢を活用した新規創薬(マイクロバイオーム創薬)の基盤構築も目的とし、代謝・免疫・インフォマティクス解析といった学際的分野の融合的研究体制を整備しています。
順天堂大学を中心に、産学官の連携や国際的な共同研究を通じて、腸内細菌療法の科学的基盤を確立し、世界に発信する研究拠点としての役割を担っています。

センター長のご挨拶

石川 大

消化器内科 先任准教授

腸内細菌療法リサーチセンター(Gut-Link Lab)のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

腸内には100兆個を超える細菌が生息しており、その多様性とバランスは私たちの健康維持に極めて重要な役割を果たしています。近年、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が、炎症性腸疾患のみならず、アレルギー、自己免疫疾患、さらにはがんや神経疾患とも関連することが次々に明らかとなり、腸内細菌叢をターゲットとした新たな治療法が世界中で注目されています。

私たちは2014年に国内で初めて潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌叢移植療法(FMT)の臨床研究を開始して以来、治療効果の向上、特定菌株の発見、そして他疾患領域への応用に向けた研究を進めてきました。これまでに複数の特定臨床研究、企業との共同研究講座、国からの大型助成金の採択を受け、科学的・実践的な成果を積み重ねてまいりました。

本センターでは、臨床現場と研究現場を直結し、腸内細菌を介した個別化医療·予防医療の実現を目指します。国内外の研究機関·企業と連携し、世界に通用する日本発の腸内細菌療法の創出に向けて挑戦を続けてまいります。

今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

沿革

2014

潰瘍性大腸炎に対して根本的治療の確立を目指し国内初のFMTに関する臨床研究を開始

2017

抗菌薬とFMTの併用療法が効率的な腸内細菌叢移植に貢献していることを明らかにし、
国際学会誌に論文報告 (Inflammatory Intestinal Diseases 2017年最高引用論文賞受賞)

2019

キリンホールディングス株式会社との共同研究講座「腸内細菌療法研究講座」設置

2021

メタジェンセラピューティクス株式会社との共同研究講座「細菌叢再生学講座」設置

2022

AMED「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(腸内マイクロバイオーム制御による次世代創薬技術の開発)」に採択難病の潰瘍性大腸炎に対して根本的治療の確立を目指し国内初のFMTに関する臨床研究を開始

2023

「潰瘍性大腸炎を対象とした抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」先進医療Bとして承認、共同研究を開始

2024

「胃がん・食道がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬と腸内細菌叢移植併用療法」
「パーキンソン病に対する抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の開発」
に関する共同研究を開始

2025

腸内細菌療法リサーチセンター 設置 (1月)

「活動期クローン病患者における抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法(A-FMT)の臨床的有効性および安全性を評価する単施設単群試験」に関する研究を開始 (6月)