腸内細菌叢移植
Fecal Microbiota Transplantation
腸内細菌叢移植とは
健康なドナーの便から作成した腸内細菌叢溶液を患者さんの腸内に注入し、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術

新しい「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」の提唱
私たちはより効果的な腸内細菌叢の再構築と腸内細菌叢移植の効果増強を狙い、腸内細菌叢移植の前処置として3種類の抗菌薬を投与する「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」 (図1)を提唱し、2014年6月から臨床研究を開始しました。

20歳以上の活動性のある潰瘍性大腸炎の患者さんを対象に行った本研究により、
①潰瘍性大腸炎に対する抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の短期、長期間有効性
②腸内細菌のバクテロイデスが治療効果と潰瘍性大腸炎の病勢に関連すること
③患者と便ドナーの関係が1.兄弟姉妹であること、2.年齢差が10歳以内(同世代)であることが腸内細菌叢移植の長期治療効果を高めること
④抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法による効果的な腸内細菌叢の再構築が、潰瘍性大腸炎の新たな治療法の確立につながる可能性
が明らかになってきました。
本研究結果は、2017年11月、2018年12月に米国の学会誌「Inflammatory Bowel Disease」に掲載され、2020年5月に国際医学誌「Journal of Clinical Medicine」電子版で発表されました。
2017年アメリカ消化器病学会に注目研究として取り上げられました
研究一覧
単施設ランダム化比較試験『潰瘍性大腸炎に対するアルギン酸併用便移植療法の検討』
潰瘍性大腸炎を対象とした抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法
免疫チェックポイント阻害薬を導入する食道がん・胃がん患者に対する抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の安全性試験
パーキンソン病患者を対象とした抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の有効性及び安全性を検討するランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験
活動期クローン病患者における抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法(A-FMT)の臨床的有効性および安全性を評価する
単施設単群試験
実績
AMED令和3年度「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(腸内マイクロバイオーム制御による次世代創薬技術の開発)」に採択
■ 研究開発課題
リバーストランスレーショナル創薬に向けた包括的マイクロバイオーム制御基盤技術開発―マイクロバイオーム創薬エコシステム構築に向けて―
■ 概要
5つの代表機関が連携する本事業において、本学は代表機関として、分担機関のメタジェンセラピューティクス株式会社とともに腸内細菌叢移植療法の臨床研究を推進し、炎症性腸疾患(IBD)に対する新たな治療シーズの創出を目指しています。
■ 期間
令和3年12月3日 ~ 令和9年3月31日(予定)
「潰瘍性大腸炎を対象とした抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」先進医療Bとして承認
本学において初めて、厚生労働省より先進医療Bの承認を受けました。
今後は保険収載を目指し、これまで蓄積してきたエビデンスと知見を最大限に活用し、一日も早く患者さんに届けられるよう尽力してまいります。
■先進医療技術の名称
アモキシシリン、ホスホマイシン及びメトロニダゾール経口投与並びに同種糞便微生物叢移植の併用療法潰瘍性大腸炎
■目的
軽症から中等症の左側・全大腸炎型の潰瘍性大腸炎患者を対象に、多施設共同単群試験により、抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法を実施した際の寛解率を主要評価指標として、抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の有効性及び安全性を検討する。
■意義
潰瘍性大腸炎の、生涯にわたって病勢をコントロールしていく必要性に鑑みると、難治例に移行させないための治療こそ重要と考えられるが、その非難治例の左側・全大腸炎型潰瘍性大腸炎に対する治療選択肢は十分とはいえず、5-ASA製剤とステロイド経口製剤の間に存在するアンメット・メディカル・ニーズを埋めることができる寛解導入療法が求められている。
■実施医療機関
順天堂大学医学部附属順天堂医院
順天堂大学医学部附属静岡病院
金沢大学附属病院
滋賀医科大学医学部附属病院
■共同研究機関
メタジェンセラピューティクス株式会社
【業務】
ドナーのリクルーティング及び便検体の管理に係る支援業務
腸内細菌叢溶液の作成、品質管理および輸送に係る支援業務
※募集を終了しております