早期からのロコモ予防を目指して
博士研究員 慎 少帥

2020.06.12

ロコモは、将来的な要介護状態や寝たきり状態への移行を抑制するために、2007年に日本整形外科学会より提唱された、
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の通称です。体を動かすのに必要な骨や関節、筋肉、椎間板など運動器の衰えや障害が原因で、「立つ」「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のことをいいます。

ロコモがもたらすリスクには、日常生活の制限、さらに悪化した場合には、支援や介護が必要になる可能性が高くなることがあげられます。ひいては、日常的・継続的な医療・介護に依存しないで健康で日常生活を送れる期間(健康寿命)を短くするリスクが高まります。したがって、ロコモの概念が広がりつつあり、高齢者の問題と認識されがちですが、ロコモは高齢者だけの問題ではない!実は40代の5人に4人はロコモ予備軍ともいわれています。ロコモに関しては,自分がその状態であることに気づいていない者が多いのです。また、最近では成人だけではなく、小学生くらいの子どもでもロコモ予備軍が急増しているといわれています。30代の私でも、年齢を重ねるにつれて身体の衰えることを感じています。40・50代から自分の体の衰えを感じやすいことは誰もが有していると考えられます。実際、骨や筋肉は40歳頃から衰え始め、50歳を過ぎた頃から急激に低下します。そのため、早ければ早いほどのロコモ予防に対する取り組みが必要であるといえます。つまり、若いうちから運動習慣やロコモ予防を意識した生活習慣をつけて大事に使い続けることが重要です。

現在、順天堂大学スポーツ健康医科学研究所は、より早期からのロコモ予防のため、青年期の運動スポーツ実施・体力と中高齢期のロコモとの因果関係を解明することを目的に、青年期に体力水準を高めれることが中高齢期のロコモ予防因子となり得るとの仮説の実証に向けてヒストリカルコホート研究を行っています。我々は1969年から現在に至るまで蓄積された全在学生の4年間の体格・体力の基礎的なデータを活用し、長期追跡データを用いてロコモの規定要因を解明することを通して、健康長寿社会の実現やそのための運動スポーツ実践の指針策定を目指しています。

これまでに明らかになった研究の知見としては、大学時代で持久的な運動強度が高いスポーツを行ったグループでは、運動強度が低いスポーツを行ったグループと比べ、ロコモリスクが低下することを明らかにしました。また、大学時代の敏捷性(反復横とび)が高いグループは、敏捷性が低いグループと比較して、ロコモリスクが低いことが確認されました。これらの研究は、スポーツ経験がある人間でも、青年期に敏捷性を高めることや運動強度が高いスポーツを行うことが中高齢期のロコモ予防に効果的である可能性を示しており、今後中高齢期のロコモ予防への具体的な介入運動を作成する際の貴重な知見です。

現時点では高齢期におけるロコモ予防対策にとどまっています。当研究を進める過程で、要介護状態に至る前段階のロコモ予防が介護予防を実現するためには重要であると考えました。また、これまで介護予防事業に携わってきた経験から、できるだけ早い段階からの健康づくりや生活習慣病予防の重要性を実感しています。ロコモ予防への道のりはこの先まだまだ長いですが、大きな進歩を遂げているロコモ予防の啓発とその行動によって、運動器の機能低下による要介護化が抑制されることに大いに期待しています。