漢方医学の特徴ー予防と治療の両立 ー
博士研究員 洪 永豊
私は、2012年に台湾から来日し、現在、スポーツ健康医科学研究所の博士研究員として運動と漢方薬による閉経後のサルコペニア予防の研究をしています。
日本では、漢方を医薬品として摂取することが多いですが、私の出身地、台湾では、薬膳料理として日常的に摂取する習慣があります。
薬膳とは、食材と漢方薬をバランスよく組み合わせた栄養の高い料理です。台湾では、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)や四物湯(しもつとう)などの漢方を鶏肉や豚肉などのお肉と一緒に煮込む薬膳スープをよく飲みます。十全大補湯は疲労や衰弱、食欲不振、また病中、病後の体力低下の際に用いられます。さらに免疫機能を改善する効果も認められていますので感染症の予防にもなると言われています。四物湯は、補血剤であり、月経後の体調回復に効果があります。また、乾燥した皮膚をうるおす効果がある為、台湾の女性には大変人気です。
日本の漢方医学は、中国から伝えられた伝統医学に基づいて、日本の風土と日本人の体質に合わせて発展した伝統医学です。漢方医学の基盤は、食事からの「食薬同源」や「食医同源」の思想が根本となっており、未病(疾病に至る手前)の段階で健康維持と様々な疾病を予防するというものです。その考え方は一次予防(健康増進)、二次予防(早期発見・早期治療)、三次予防(特定疾患の悪化防止・リハビリテーション)という予防医学と似ています。中国伝統医学(中医学)では、漢方薬と食事療法(薬膳料理)のほか、運動(体操と拳法)と鍼灸整体治療もおこなっています。中医学でも漢方薬と運動によるトレーニング効果が着目されています。
最近、免疫力を高めるという言葉をよく耳にしますが、漢方薬と運動、この2つを組み合わせることにより健康増進や病気予防につながることを期待しています。