女性スポーツ研究センターは、8月10日~13日の4日間にわたりオンライン開催された「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」の実施機関として、運営を担いました。また、2日目には「一般公開プログラム」として「オープンシンポジウム”ASEAN-JAPAN Gender Equality in Sports”」を開催しました。
「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」ワークショップ報告
ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports
日本政府がスポーツ分野の協力を進めるアセアン諸国を対象に、スポーツにおけるジェンダー平等の促進を目的としたプログラム「ASEAN-JAPAN Workshop on Promoting Gender Equality in Sports」が開催され、アセアン10か国から選出された約70名の参加者がオンライン上で集いました。
今回のワークショップでは、政策立案側であるPolicy Makersと将来の担い手であるYoung Womenに分かれて行うセパレートセッションと、全員参加で行うミックスセッションを実施。セパレートセッションでは、それぞれの目的やテーマに沿って講義やグループディスカッションが展開され、それらをミックスセッションで共有し合うことで、本ワークショップにおける学びを深めました。
Policy Makers Workshop
メインファシリテーター:ギレーン・デマーズ博士(ラヴァル大学 教授)
ジュニアファシリテーター:マリサ・シュレンクラー氏(リーダシップトレーニングと女の子のエンパワーメントを専門とするスポーツと開発分野の専門家)
アシスタントファシリテーター:野口 亜弥氏(順天堂大学スポーツ健康科学部 助教)
ポリシーメーカーワークショップは、各国から3名(中央政府、地域政府、各国オリンピック委員会女性スポーツ委員から各1名)が推薦され、約30名が参加して行われました。デマーズ博士からスポーツにみられるジェンダー課題などの講義がなされると、参加者は国ごとのグループディスカッションで自国における課題やその解決に向けた戦略や取り組みについて話しました。さらに、各国で「女性のスポーツ参加率向上のための政策レベルのアクションプラン」を制作し、国を超えた議論や若年女性の意見を政策に取り入れることも実践していきました。
Young Women Workshop
メインファシリテーター:ロンベ・ムワンブワ博士(NOWSPAR (National Organisation for Women in Sprot, Physical Activity and Recreation) 代表)
ジュニアファシリテーター:マリサ・シュレンクラー氏(リーダシップトレーニングと女の子のエンパワーメントを専門とするスポーツと開発分野の専門家)
アシスタントファシリテーター:井上 由惟子氏(一般社団法人S.C.P.Japan 共同代表/バルサ財団・日本プロジェクト コーディネーター)
若年女性のエンパワーメントを図るワークショップ「スポーツを通じたライフスキルリーダーシップトレーニング」には、アセアン各国から主にスポーツの分野で活動をする次世代リーダー29名と順天堂大学国際教養学部の学生2名が参加。リーダーシップスキルの中でも特に“アドボカシースキル(社会課題分析に基づいた政策提案のスキル)”に焦点を当てたセッションが展開され、アドボカシースキルがどのようにリーダーシップに関係するのか、課題を改善するためのアドボカシー利用について理解しました。そして、アドボカシーの実践のために必要なコミュニケーションツールやスキルについて講義を通して学びながら、実際の計画を作成しました。最後に、ワークショップでなにを獲得できたか、改めてどのようなリーダーになりたいかを考え、参加者同士で共有しました(写真中央、右)。
全参加者で行われたミックスセッションでは、ポリシーメーカーが作成したポリシーデベロップメントフレームワークを若年女性に共有したり、若者の視点から各国の政策に取り入れてもらいたいアクションが提案されるなど、建設的で有意義なセッションとなりました。
全体を通して、参加者が自ら考え意見を出し合う場面や、参加者同士が協力して作業をする参加型アプローチでワークショプが進められ、参加者からは「これまでこのようなワークショップは実施したことがなく、非常に有意義な時間であった」との感想が聞かれました。
そして今後、このワークショップで生まれたアクションプランがどのように各国で実行されていくのか、アセアン地域におけるスポーツを通じたジェンダー平等がどのように実現されるのか、参加した誰もが期待と手ごたえを感じたワークショップとなりました。
最終日Closingでの参加証明書授与の様子 順天堂大学からは国際教養学部の2名が Young Women Workshop に参加
オープンシンポジウム ”ASEAN-JAPAN Gender Equality in Sports” 報告
ワークショップ2日目となる8月11日午前の時間を利用して行われた「オープンシンポジウム」は、ワークショップ参加者はもとより、幅広い方に聴講いただけるよう一般公開とし、日英の同時通訳者を配して実施しました。
開会挨拶まずオープニングでは、今回のワークショップ主催者であるスポーツ庁より、自身もアスリートとして2004年アテネオリンピックで金メダルを獲得されている室伏広治長官に、ビデオメッセージで開会のご挨拶をいただきました。
Part1
Part1では、「アジアの女性とスポーツ」をテーマに、3名の講師によって講演が行われました。
最初に登壇されたASEAN事務局社会・文化共同体(ASCC)人間開発局のロドラ・トラルデ・ババラン局長には、「なぜASEAN諸国に女性スポーツ政策が必要なのか?」について講演いただきました。
続いて、女性スポーツ研究センターの小笠原悦子センター長は、「アジアにおける女性スポーツの歴史的なムーブメント」に関して、これまでの自身の活動も交えてレクチャーしました。
さらに、UN Women(国連女性機関)インドネシア国事務所兼ASEAN事務所のジャムシェド・エム・カジ代表からは、「SDGs Goals 5におけるスポーツの貢献」について興味深いお話を披露していただきました。
ロドラ・トラルデ・ババラン ASEAN事務局社会・文化共同体(ASCC)人間開発局 局長
ジャムシェド・エム・カジ UN Women(国連女性機関)インドネシア国事務所兼ASEAN事務所 代表
Part2
Part2「女性のロールモデルの影響におけるパネルトーク」においては、ワークショップのアシスタントファシリテーターでもある順天堂大学スポーツ健康科学部、野口亜弥助教がモデレーターを務め、3名のパネリストとディスカッションを展開しました。
ワークショップ全体のメインファシリテーターでありIOC Women and Sport Award(南北アメリカ地区)受賞歴のあるギレーン・デマーズ博士は、研究者としてジェンダー平等を牽引してきた経験から、スポーツ界全体で女性のロールモデルが増えていくことにどんな価値があるのかを紹介。
オリンピアンでありJOC理事も務めた筑波大学体育系、山口香教授、また東京2020パラリンピックパラパワーリフティングインドネシア代表のニ・ネンガ・ウィディアシ選手には、ご自身にとってのロールモデルの存在や、スポーツ界で活躍する女性が社会に対して与える影響について語っていただきました。
※なお、このあとの東京2020パラリンピック競技大会に出場されたウィデイアシ選手は、前回リオデジャネイロ大会の銅メダルを上回る銀メダルを獲得されました!
パネリストのギレーン・デマーズ博士(左上)、山口香先生(左下)、
ニ・ネンガ・ウィディアシ選手(右上)、モデレーターの野口亜弥先生(右下)
Part3
Part3では、「日本における現在の取り組み」と題して、日本サッカー協会の田嶋幸三会長より、アジア各国協会との連携やサッカーを通じた女性の活躍推進に向けた活動についてご紹介いただきました。
閉会挨拶
最後に、UN Women(国連女性機関)日本事務所の石川雅恵所長から閉会挨拶をいただき、盛況のうちにオープンシンポジウムは幕を閉じました。
今回のオープンシンポジウムには、スポーツ現場に立つ指導者や教員に加え、スポーツ組織・国際競技団体関係者、研究者など様々な立場から多くのご参加をいただきました。最終的な参加者は200名を超え、その約4割が海外から聴講という日アセアン事業にふさわしい聴講者と共に、“スポーツにおけるジェンダー平等”について考える時間を共有しました。
Part1登壇者への質疑応答は、予想をはるかに超える数の質問がチャットで寄せられるなど、本オープンシンポジウムに対する国内外における関心の高さがうかがえました。
※本プロジェクトは、日本政府を通し、JAIFによりサポートされています