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2025.10.16
活動報告
輪島市役所を訪問し、災害後の健康と安心の“次の一歩”を共創
2025年10月3日、順天堂大学COI-NEXT拠点の研究チームは、拠点参画機関である群馬大学とともに輪島市役所を訪問しました。目的は、地震・水害で仮設住宅に暮らす住民の健康を守る新しい支援モデルを市と一緒に描くことです。

午前の意見交換では、隈丸加奈子プロジェクトリーダーから、仮設住宅での長期にわたる生活の中でみられる課題の一つであるフレイル(加齢による体力・心身機能の衰え)ついて、その予防策を中心に提案しました。順天堂大学の町田修一先生は、狭い空間でもできる歩行速度や立ち上がりテストなどの体力測定とその個別運動処方、富士通Japan株式会社の「Fujitsu ウェルネス運動支援サービス※1」を用いたAI解析によるフィードバックシステムを紹介。データをその場で「見える化」することで、運動の継続や達成感につなげる仕組みです。市役所の皆様から、被災前から続いてきた「いきいき百歳体操」や介護予防サポーターの活動の再開のお話を伺い、既存の自主活動と新しい技術をどう重ね合わせていくかを、皆で議論しました。
また、群馬大学の西田進一先生は、LoRaWAN※2センサーを用いた仮設住宅環境の計測を提案し、CO₂・温湿度・熱中症指標のリアルタイムモニターに加えて、将来的な見守りセンサーへの拡張の可能性を議論しました。
午後は仮設住宅の空き部屋、そして仮設住宅の集会所で行われていた百歳体操を見学させていただきました。住民の皆さんが生き生きと体を動かす姿や、日々の暮らしに対する率直な声を伺いながら、短い周期での体力測定やオンライン運動教室、環境・見守り機能を有するLoRaWANセンサーなど、住民の暮らしの中に自然に入り込む支援の形を具体的にイメージし、研究成果が地域で“生きる”次の一歩となった意義深い対話の場でした。

市役所の前に設置されたLoRaWAN(温度や湿度を測ります)
現場の実情等を丁寧に共有くださった輪島市役所の皆様、そして仮設住宅や集会所で出会った住民の皆様が率直な声を届けてくださったことに、心より感謝申し上げます。
被災後の生活を支えるのは、ひとりひとりの安心とつながり。研究と現場の知恵を合わせ、災害関連死を防ぐ未来志向の地域モデルの実現にむけて、拠点は引き続き貢献してまいります。
※1:Fujitsu ウェルネス運動支援サービスは、健康増進・介護予防事業などにおける運動機能評価を「AI体力測定」にて支援するサービスです。多様な便利機能により、多人数における測定業務の効率化を実現。下肢の動作能力を手軽かつ継続的に測ることを支援します(詳細はウェルネス運動支援サービスをご参照ください)。
※2:LoRaWAN®は、少ない電力で広い範囲に通信できる無線の仕組みです。電池で長く動く小さなセンサーや機器を、都市部から山間部までインターネットにつなげることができます。通信は双方向で、多くの機器を同時に扱え、安全に情報をやり取りできる機能も備えています。この特長を活かすことで、河川の水位や災害情報の監視、医療や福祉での見守りシステムなど、人々の安心・安全につながるさまざまな取り組みに利用できます(詳細は LoRa Alliance をご参照ください)。
