Program
開催日程 2025年 10 月 7 日(火)〜 10 月 9 日(木)
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Day1
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01オープニング(自己紹介含む)
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02女性とスポーツ
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
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03女性アスリートのコンディショニング
鯉川なつえ
女性スポーツ研究センター 副センター長 -
04スポーツ栄養
鈴木志保子
神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 研究科長 -
05ボディ・コンフィデント・スポーツの創造
Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長
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Day2
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06スポーツにおけるプロフェッショナルコーチと女性リーダー
Marlene Bjornsrud (マーリーン・ビヨンズロッド)
米国女性コーチアライアンス 元代表 -
07リーダーのためのモチベーション戦略
Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長 -
08思考と感情整理のメンタルトレーニング
田中ウルヴェ京
スポーツ心理学者、博士(システムデザイン・マネジメント学)、慶應義塾大学 特任准教授 -
09CoachDISCプログラム
Elizabeth Masen (エリザベス・メイソン)
アスリートアセスメント CEO
伊藤 真紀 法政大学スポーツ健康学部 准教授 -
10CoachDISCケーススタディ
守屋 麻樹 ローレルゲート株式会社 代表取締役
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11ダイバーシティとインクルージョンの意義と促進方法
羽石 架苗 ウエスタン・コロラド大学 教授
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12スポーツとジェンダー
山口理恵子 城西大学経営学部 教授
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Day3
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13リーダーシップ&コラボレーション
Lisa O'Keefe(リサ・オキーフ)
IWG(国際女性スポーツワーキンググループ) 事務局長(2022-2026) -
14Navigating the Future
for Women Sports Leadersパネリスト:
Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
Elizabeth Masen (エリザベス・メイソン)
Lisa O'Keefe(リサ・オキーフ)
羽石 架苗
小林美由紀
山口理恵子
伊藤 真紀
守屋 麻樹
鯉川なつえ
コーディネーター:
小笠原悦子 -
15ネットワーキング
小林美由紀
一般社団法人全日本大学女子サッカー連盟 会長 -
16 修了式・クロージング
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開催地 軽井沢プリンスホテル ウエスト
住所:〒389-0193 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1016-87
主催女性スポーツ研究センター(JCRWS)
共催NPO 法人ジュース(JWS)、WeCOACH
協力株式会社タイドデザイン
株式会社モペット
株式会社ニッスイ
花王株式会社
ユニ・チャーム株式会社
01オープニング(自己紹介含む)
講師小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
関口 晃子 女性スポーツ研究センター スタッフ
「女性リーダーアカデミー2025」軽井沢の初秋に、新たな学びが始動!
11回目を迎えたアカデミー(WCA)は、初秋の爽やかな風が吹く軽井沢で幕を開けました。
全国各地から、オリンピアンやパラスポーツ関係者、地域スポーツで活躍する女性指導者など、多様なバックグラウンドを持つ30名の女性リーダーが集結。デフスポーツ界からも初の参加があり、まさに“多様性の体現”となるにぎやかな幕開けとなりました。
プログラムは恒例のアイスブレイクからスタート。緊張がほぐれ、笑顔が交わされる中で、自然と温かな交流が生まれていきました。
続く自己紹介のセッションでは、3日間をともに学ぶ仲間の言葉に耳を傾けながら、ユーモアにあふれた自己PRが次々と飛び出し、会場は終始和やかな雰囲気に包まれました。
こうして、参加者一人ひとりが新たな学びへの意欲を高め、3日間のプログラムがスタートしました。
02女性とスポーツ
講師小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
多様なリーダーが描くスポーツの未来
はじめに、小笠原悦子センター長より、女性スポーツの発展における世界的なムーブメントが紹介されました。国際的な潮流として、国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)の活動やブライトン宣言の意義に触れながら、世界の動向と日本での取り組みについて、わかりやすく説明がありました。
パリ2024大会では、オリンピック史上初めて男女比がほぼ50%に達し、ジェンダー平等の実現に向けて大きな一歩が踏み出された一方、IOCが新たに注目しているのは、女性コーチの割合が依然として13%程度にとどまっている点です。小笠原センター長は「リーダーの数も重要だが、そのリーダーたちのクオリティの方がさらに重要である」と述べ、量的拡大に加え、質の向上を目指す必要性を強調しました。
また、毎年「女性とスポーツⅡ」として登壇されている山口香先生が今年はご欠席のため、これまでWCAで伝えてこられた言葉を代わって紹介しました。そのメッセージを通して、小笠原センター長は「道を切り開いてきた先人の想いを引き継ぎ、次の世代のために行動するリーダーであってほしい」と呼びかけました。
03女性アスリートのコンディショニング
講師鯉川なつえ
女性スポーツ研究センター 副センター長
不調を見逃さない
女性アスリートの健康を守る新たな視点
日本のWCAには、米国のNCAA版WCAにはない独自の講義がいくつかあります。
アメリカでは、管理栄養士やメディカルドクター、アスレティックトレーナーといった専門職がチームに常駐している一方、そうした体制がまだ十分に整っていない日本では、コーチ自身が栄養や医学の基礎知識を身につける必要があります。この講義は、2014年にNCAA WCAを現役コーチとして受講した鯉川なつえ副センター長が、その重要性を強く感じた経験から生まれました。
鯉川副センター長は、コンディショニングとは「アスリート本人だけでなく、支える側も同じ思いで準備を整えること」と述べ、女性アスリートが陥りやすい「女性アスリートの三主徴(FAT)」や、近年注目される「男性アスリート三主徴(MAT)」についても言及。エネルギー不足が心身に及ぼす影響や、月経、骨密度、睡眠の重要性を具体例を交えながら解説しました。
最後に、女性アスリートが安心して話せる環境づくりの大切さに触れ、日常の何気ない会話の中から不調の兆しを察知し、専門家と連携しながら寄り添う姿勢の重要性を強調して講義を締めくくりました。
04スポーツ栄養
講師鈴木志保子
神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 研究科長
“管理”から“戦略”へ
パフォーマンスを支えるスポーツ栄養学
本講義では、鈴木志保子先生より、スポーツ栄養学の基本概念について、科学的根拠と実践的視点を交えた解説がありました。栄養学は単なる「食事の管理」ではなく、栄養素の代謝やパフォーマンスへの影響を踏まえた総合的な学問であると説明。活動量に応じたエネルギー管理や競技力向上に向けた栄養戦略の重要性、さらに選手一人ひとりの年齢・競技特性・身体状況に応じた“その人に合った栄養指導”の必要性を強調しました。
また、サプリメント使用に際しては、食事量の把握を前提としたうえで、エビデンスに基づく選択とアンチ・ドーピング認証の確認が不可欠であると述べました。
ジュニア世代においては、成長曲線の定期的な確認により発育状況を把握し、エネルギー不足による貧血・疲労骨折・発育阻害を未然に防ぐことの重要性も指摘。さらに、REDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)による健康への影響に触れ、指導者・選手・栄養指導担当・医療スタッフが連携し、食事を「体調管理」ではなく「パフォーマンスを支える戦略」として位置づけることの大切さを説きました。
05ボディ・コンフィデント・スポーツの創造
講師Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長
通訳小林美由紀
一般社団法人全日本大学女子サッカー連盟 会長
スポーツを“安心できる場所”に
ボディ・コンフィデント・スポーツの実践から
今年のカリキュラムに新たに加わったのは、Body Confident Sportの開発者の一人であるニコル・ラボイ先生による「ボディ・コンフィデント・スポーツの創造」の講義です。Body Confident Sportは、女の子たちがボディイメージの悩みからスポーツをやめてしまうことのないよう、安心してスポーツに親しめる環境づくりを目指す世界的な取り組みです。
ニコル先生は、社会やメディアが作り出す「理想の女性像」やジェンダーステレオタイプが、女子アスリートの自己肯定感を低下させ、スポーツ離れにつながっている現状を指摘しました。そして、異なる競技の選手像を例に挙げ、先入観が選手の可能性を制限する危険性について、参加者たちは実践を通して学びました。さらに、ニコル先生自身の体験談を交えながら、指導者の言葉が選手の人生に与える影響の大きさについても強調しました。
後半では、ボディ・トーク(身体に関する発言)を避け、身体の機能や感情に焦点を当てたコミュニケーションの重要性が語られました。参加者全員が「Body Talk Free Zone(ボディ・トーク禁止エリア)」ステッカーを手に、より前向きで安心できるスポーツ環境づくりへの意識を新たにしました。
06スポーツにおける
プロフェッショナルコーチと女性リーダー
講師Marlene Bjornsrud (マーリーン・ビヨンズロッド)
米国女性コーチアライアンス 元代表
通訳伊藤 真紀
法政大学スポーツ健康学部 准教授
自分を整え、高める
プロフェッショナルコーチ・リーダーの条件
マーリーン・ビヨンズロッド先生の講義は、アメリカ・コロラドスプリングスと軽井沢を結ぶオンライン形式で実施されました。
まずマーリーン先生は、リーダーに求められる資質として「目的の明確化」と「価値観の重要性」を挙げ、ご自身の価値観である「平和・寛大さ・シンプルさ・謙虚さ」を日々意識していると語りました。そして、リーダーの責任として、才能を発揮できる環境づくり、安心して取り組める雰囲気づくり、仲間を支える姿勢の重要性を説きました。加えて、リーダー自身のエネルギー管理や心身のケアの大切さについても触れ、自己対話を通じて自己肯定感を高める方法を紹介。長年のスポーツ界での経験に基づく具体的な言葉は、参加者に深い学びと気づきをもたらしました。
講義の締めくくりとして、「あなたは、あなたしかいない唯一無二の存在であり、世界を変えていく力を持っている」という力強いメッセージを届けました。その瞬間、遠く離れたオンラインの画面越しでも、マーリーン先生がそばで寄り添い背中を押してくれているかのような温かさが会場全体を包みました。
07リーダーのためのモチベーション戦略
講師Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長
通訳羽石 架苗
ウエスタン・コロラド大学 教授
変化を起こす力
社会構造の変革を促す女性リーダーシップ
アメリカ・ミネソタ大学にある少女・女性スポーツ研究機関「タッカーセンター」のセンター長、ニコル・ラボイ先生より、貴重なデータと自身の経験を交えたレクチャーが行われました。
講義では、社会的・組織的・対人的・個人的の4つのレベルから成る「エコロジカル・システム・モデル」が紹介され、女性指導者が直面する課題は個人の問題ではなく、社会構造全体に起因することが解説されました。参加者との対話を通じて、孤立感やダブルスタンダードなど現実的な課題が共有され、協力的な仲間や理解ある男性とのネットワーク構築が重要であると強調されました。さらに、感謝を日常に取り入れることで得られる心理的効果や、個人・組織で感謝を共有する意義についても紹介。WCAではお馴染みとなった“パワーポーズ”も全員で実践し、自信を持って行動する力を体験的に学びました。
講義の最後には、ニコル先生から「変化を起こす力は、あなた自身の中にある」という力強いメッセージが送られ、参加者たちは自らの行動や周囲への影響について深く考える時間となりました。
08思考と感情整理の
メンタルトレーニング
講師田中ウルヴェ京
スポーツ心理学者、博士(システムデザイン・マネジメント学)
慶應義塾大学 特任准教授
感情を力に変える
思考を整え前に進むメンタルトレーニング
田中ウルヴェ京先生による「思考と感情整理のメンタルトレーニング」では、ストレスや感情の扱い方を中心に解説が行われました。京先生は、ストレスを一時的にやり過ごすのではなく、目標達成に向けて建設的に変化させることの重要性を強調。自身のアスリート経験やコーチとしての体験を交え、怒りや悲しみなどの感情を抑えるのではなく、エネルギーとして活用する方法を参加者に伝えました。
講義中に、感情を言語化し自己理解を深めるワークも実施。思考や行動の背景にある「思考の癖」に気づくことが、より良い人間関係や競技パフォーマンス向上につながることが示されました。さらに、SNS上での誹謗中傷への対応にも触れ、感情を正しく理解し、建設的に扱うことの大切さが強調されました。
09CoachDISCプログラム
講師Elizabeth Masen (エリザベス・メイソン)
アスリートアセスメント CEO
伊藤 真紀
法政大学スポーツ健康学部 准教授
行動特性を知り、チームを動かす
CoachDISCが導く対話と成長のチームづくり
アスリート・アセスメント社(オーストラリア)CEOのエリザベス・メイソン先生による講義では、独自のプログラム「CoachDISC」を活用し、自己理解と他者理解を深めながら、多様性を生かしたチームづくりについて学びました。
参加者は事前にCoachDISCを実施し、自身のタイプを把握したうえで講義に臨みました。
冒頭で、DISCは性格や能力を評価するものではなく、「行動の傾向を理解し、強みを活かすためのツール」であると説明。人の行動特性を4つのタイプに分類し、それぞれの特徴や他者との関わり方を具体例を交えて解説しました。
実践演習では、タイプごとの「話し方」や「ペース」の違いを体験し、チーム内での効果的な関わり方を探りました。さらに、「相手の行動を変えるには、自分がどう行動すべきか」を考えるアクティビティを実施。多様な行動特性を尊重し、相手に合わせたコミュニケーションこそが信頼関係を生み、チームの力を最大化する鍵であると強調されました。
10CoachDISCケーススタディ
講師守屋 麻樹 ローレルゲート株式会社 代表取締役
Good & Better
CoachDISCで磨くフィードバックの力
CoachDISCの基本やその理論を現場で実践的に活用するための考え方を理解した後は、守屋麻樹先生による「CoachDISCケーススタディ」で、受講者それぞれのコーチング現場で様々なタイプの選手とのコミュニケーションに応用するための力を養いました。
まず、選手一人ひとりに合わせた具体的なアプローチ方法に焦点を当て、効果的なフィードバックの手法を学びました。守屋先生は、「フィードバックとは相手を評価することではなく、成長を促すための対話である」と強調。フィードバックは具体的に、客観的に、タイムリーに伝えることが重要であると解説しました。特に、Good & Betterという形式を用いて、まず良い点を認めたうえで次の改善点を伝える方法が紹介されました。
グループ演習では、実際の指導現場を想定したケースについてディスカッションを行い、コーチ役の参加者が選手役の守屋先生に対して、効果的な伝え方を実践。タイプごとに異なる価値観や反応を体験することで、状況に応じて柔軟に対応する力を強化しました。
最後に守屋先生は、「指導者自身もフィードバックを通して自己を振り返り、より良い関わり方を模索し続けてほしい」とメッセージを送り、講義を締めくくりました。
11ダイバーシティとインクルージョンの
意義と促進方法
講師羽石 架苗 ウエスタン・コロラド大学 教授
ジェンダー平等の概念が変化
多様性を受け入れ、お互いを理解し合う
「ダイバーシティとインクルージョンの意義と促進」をテーマにした本講義では、スポーツ界における多様性の理解と、指導者としての関わり方について学びを深めました。
コロラド在住の羽石架苗先生は、元サッカー選手・監督としての経験、そしてコロラド大学で教鞭を執る教育者の視点から、社会の変化がスポーツ現場の価値観や指導スタイルにも影響を与えていると指摘しました。
まず、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の存在に触れ、「それを完全に排除することではなく、自覚し、向き合う姿勢を持つことが大切」だと強調。さらに、ユニバーサルデザイン・フォー・ラーニング(UDL)の考え方を紹介し、個々の特性や背景に応じた指導・表現・学びの機会を設計する重要性を語りました。
羽石先生は最後に、「一人ひとりの違いを理解し、多様な背景を持つ人々が力を発揮できる環境を整えることこそ、これからのリーダーに求められる役割である」とまとめ、参加者に対して、自らのリーダーシップを見つめ直し、行動へとつなげるきっかけを投げかけました。
12スポーツとジェンダー
講師山口理恵子 城西大学経営学部 教授
身近なところから一歩を
スポーツ界のジェンダー構造を変えるために
ジェンダーの基本概念から社会構造における不平等、そしてスポーツ界に見られる具体的な課題までを横断的に解説しながら、山口理恵子先生は、戦後の性別役割分業の影響に加え、AIや医療、公共施設設計などに潜むジェンダーバイアスを示し、社会全体に深く根付く構造的な偏りを指摘しました。また、近代スポーツが男性中心に発展してきた歴史的背景を踏まえ、女性アスリートの参加制限、メディア報道の偏り、指導現場でのハラスメント問題など、今なお続く課題を浮き彫りにしました。
講義の後半では、参加者自身の経験をもとに、ジェンダーバイアスへの向き合い方や意識改革のための具体的なアクションを議論。グループワークでは、「スポーツ界のジェンダー構造を変えるために、今できることは何か」をテーマに、活発な意見交換が行われました。 最後に山口先生は、「連帯をしていくことがとても重要。身近なところ、今すぐできることからはじめましょう!」と呼びかけ、参加者に行動への勇気を促しながら講義を締めくくりました。
13リーダーシップ&コラボレーション
講師Lisa O'Keefe(リサ・オキーフ)
IWG(国際女性スポーツワーキンググループ)
事務局長(2022-2026)
通訳羽石 架苗 ウエスタン・コロラド大学 教授
仲間とともに未来を動かす
リーダーシップとコラボレーションの実践
ラグビー元スコットランド代表であり、長年スポーツイングランドで女性スポーツの推進に携わってきたリサ・オキーフ先生による講義では、「リーダーシップとコラボレーション」をテーマに、豊富な実体験をもとにした力強いメッセージが語られました。
リサ先生は、リーダーシップを「明確なビジョンを掲げ、人々をその方向へ導く力」とし、コラボレーションを「共通の目的に向かって協力し合うこと」と定義。その上で、両者の本質的な違いと相互作用について解説しました。
講義の中では、自らが先導した女性スポーツ参加促進キャンペーン「This Girl Can」を事例として紹介。見た目や能力への不安から運動をためらう女性たちの心理的障壁を可視化し、社会的ムーブメントへと発展させた背景を明かしました。さらに、民間企業との連携やコロナ禍でのデータ分析など、セクターを超えた協働の実践が、いかに変化を生み出す力となるかを強調しました。加えて、来年開催を控える世界会議「IWG Global Summit 2026」に向け、事務局長として取り組む中で感じた葛藤や挑戦の実際についても、率直に語られました。
最後にリサ先生は、「変化は一人では起こせない。仲間と共に行動することこそが真のリーダーシップである」と語り、参加者一人ひとりに、組織や社会の変革に向けた行動を呼びかけました。
14Navigating the Future
for Women Sports Leaders
パネリストNicole LaVoi(ニコル・ラボイ), Elizabeth Masen, Lisa O'Keefe,
羽石 架苗、小林美由紀、山口理恵子
伊藤 真紀、守屋 麻樹、鯉川なつえ
コーディネーター小笠原悦子
学びを行動に
つながりが生む新たなリーダーシップ
このパネルディスカッションでは、3日間のプログラムで得た学びを振り返り、参加者一人ひとりが今後どのように行動し、どんな未来を描いていくかを考えました。多職種・多分野の参加者が交流することで、スポーツを異なる立場から捉える新しい視点が広がり、個々の専門性を超えた協働の可能性が示されました。
参加者たちは、WCAで強いパッションに触れた経験を語り、女性であることの誇りや、「行動すれば変化を生み出せる」という自信、そして仲間とのつながりを喜びとして口々に表現しました。
講師陣からは、知識を行動につなげること、小さな変化を積み重ねることの重要性が繰り返し強調されました。完璧を求めるのではなく、一歩を踏み出す勇気こそがリーダーシップの原点であり、男性性・女性性の両面を柔軟に生かしながら、自身の専門性を力に変え、周囲を巻き込むリーダーとして成長してほしいと述べられました。
後半の質問コーナーでは、子育てや産休に関するテーマも取り上げられ、講師だけでなく参加者自身の経験やアドバイスも共有されました。
「一人では変えられないことも、つながりによって実現できる」という言葉のもと、参加者たちはコミュニティとネットワークの価値を再確認。講師たちは、300名を超えるWCA修了生が築くネットワークを、互いの学びと実践の場として今後も活かすよう呼びかけ、パネルディスカッションを締めくくりました。
15ネットワーキング
講師小林美由紀
一般社団法人全日本大学女子サッカー連盟 会長
アクションへとつなぐ力
ネットワークが生み出す変革
最終講義では、小林美由紀先生による「ネットワーキング」が行われました。小林先生は、女子サッカー留学支援プログラム「ブリッジ」を30年以上にわたり運営し、現在はジェフユナイテッド市原・千葉レディースの強化担当として、現場から女性リーダーの育成とスポーツ界の変革に尽力されています。
講義では、2021年の発足当初から理事として関わってきた「WEリーグ」について、設立の背景と理念を紹介。その理念を体現するための挑戦とともに、SNSでの誹謗中傷、スポンサー獲得の難しさ、理念への理解不足といった課題にも直面してきた現実を率直に語りました。日本における女性スポーツのプロ化の難しさと、変革の必要性が浮き彫りになりました。
後半では、参加者一人ひとりがこの3日間の学びをもとに、自らの“アクションプラン”を宣言。ハラスメント対策、地域スポーツの普及、ライフステージに応じた支援、教育現場での取り組みなど、それぞれの立場から具体的な行動が次々と語られました。
小林先生は「言葉にした瞬間から行動が始まる」と力強く呼びかけ、参加者たちの決意を後押ししました。最後に、WCAで生まれたネットワークを通じて互いに支え合い、行動を継続していくことの大切さを共有し、3日間にわたる全プログラムは大きな拍手の中で締めくくられました。
16修了式・クロージング
未来を創るリーダーたち
WCA11期生、ここから始まる新たな挑戦
3日間の集大成として行われた修了式では、「ベストリーダー賞」の発表が行われ、「考えを行動に移す実行力」「他者を巻き込むリーダーシップ」などの理由から、井上陽子さんが選ばれました。WCA11年の歴史の中で初めてとなる、中央スポーツ組織のアドミニストレーター(事務職員)の受賞。スポーツ組織の役員やコーチ、サポートスタッフのみならず、組織運営を支える立場からもリーダーシップが発揮される重要性が示されました。 プレゼンターの鯉川副センター長から記念の盾が授与されると、井上さんは「コラボレーションの掛け算で日本のスポーツ文化を元気にしたい」という力強い決意を語り、会場は大きな拍手に包まれました。
続いて、講師陣から参加者一人ひとりへ温かなメッセージが贈られ、そして、WCA全過程を修了した参加者たちに、小笠原センター長より修了証が授与されました。
最後に、小笠原センター長は「335個の輝く星が集まれば、間違いなく何かを創り出すことができるでしょう。そのとき、一人で抱え込まず、思いを共有し、一緒に取り組んでくれる仲間を増やし、アップデートしながら継続することが大切です。リーダーとして、仲間とともに成長し、エンパワーされる感覚(自分が力を与えられる感覚)を味わってください」と、WCAを終え、リアルな現場で挑戦を続ける修了生たちにエールを送りました。温かな拍手と笑顔に包まれながら、WCA11期生たちは新たな一歩を踏み出し、未来を照らすリーダーとして歩み始めました。
これまで11回のWCAで誕生した修了生は合計335名。修了期ごとのネットワークはもちろん、居住地や競技、分野において、修了生による様々なコラボレーションが少しずつ実を結び始めています。




































































