Program
開催日程 2015年 9 月 15日(火)〜 9 月 17日(木)
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Day1
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01オープニング(自己紹介含む)
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02プロフェッショナルとしてのコーチング
Marlene Bjornsrud (マーリーン・ビヨンズロッド)
米国女性コーチアライアンス 代表 -
03女性アスリートのコンディショニングⅠ
「女性アスリートの三主徴」鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
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04女性アスリートのコンディショニングⅡ
「スポーツ栄養」鈴木志保子
神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授 -
05スペシャルトーク@ラウンジ
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Day2
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06コーチのためのキャリアプランニング
新井彬子 早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手
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07DISC プログラム
Liz Hanson(リズ・ハンソン)
アスリート・アセスメント クライアント・ディレクター
新井彬子 早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手 -
08メンタル&コーピングスキル
田中ウルヴェ京 株式会社ポリゴン 代表取締役
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09コミュニケーションスキル
杉山芙沙子
パーム・インターナショナル・テニス・アカデミー 校長 -
10ワークライフバランス
工藤陽子
新日本有限責任監査法人 シニアプリンシパル -
11チームビルディング
高倉麻子 プロサッカー 監督
小林美由紀 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
マネージャー兼コーチ -
12リーダーシップ
山口香 筑波大学大学院 体育系 准教授
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
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Day3
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13女性スポーツの歴史
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
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14スポーツにおけるダイバーシティ
Marlene Bjornsrud (マーリーン・ビヨンズロッド)
米国女性コーチアライアンス 代表
山口理恵子
城西大学 経営学部マネジメント総合学科 准教授 -
15ネットワーキング
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16 クロージング・修了式
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開催地:軽井沢プリンスホテル住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢
主催女性スポーツ研究センター(JCRWS)
協賛株式会社東芝
協力女性コーチアライアンス(米国)
日本財団パラリンピック研究会
新日本有限責任監査法人
01オープニング
講師小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
女性リーダーアカデミー2015のはじまりは、
フリートークから
女性リーダーアカデミー2015のはじまりは、講義の部屋とは異なる部屋から。このフリースペースでグループごとに、自分の好きなものついてのフリートークが展開されました。
その後、講義の部屋に移動し、3日間を共に過ごす参加者、講師、スタッフそれぞれが自己紹介を行いました。 主催者である、女性スポーツ研究センター小笠原悦子センター長、鯉川なつえ副センター長から、熱のこもった挨拶がなされました。
02プロフェッショナルとしての
コーチング
講師マーリーン・ビヨンズロッド
米国女性コーチアライアンス 代表
通訳伊藤 真紀 法政大学スポーツ健康学部 助教
コーチに必要不可欠な能力とは何か、
コーチが果たすべき5つの責任
コーチの役割について、特に女性コーチは、少女達のロールモデルとして重要な役割があると言及し、女性コーチに憧れる少女に対して責任を持たなければならないと説明しました。また、コーチに必要不可欠な能力とは何か、さらに、コーチが果たすべき5つの責任についても語られました。
最後に「コーチングの木」という課題を参加者一人ひとりが行い、自分がコーチになる上で影響を与えてくれた人たちに感謝しました。マーリーン・ビヨンズロッド先生の人柄が現れたあたたかい講義となりました。
03女性アスリートのコンディショニングⅠ
「女性アスリートの三主徴」
講師鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
コーチとして知っておくべき
女性アスリートの三主徴
女性アスリートを指導する上で知っておくべき、女性が陥りやすい3つの障害「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad :FAT) とはどのようなものかが説明されました。また、FATの治療・予防に関する内容について最新の情報が提供され、コーチとして、アスリートに対する正しい教育と情報提供の重要性が説かれた講義となりました。
04女性アスリートのコンディショニングⅡ
「スポーツ栄養」
講師鈴木志保子 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授
アスリートが良好な競技人生を送るために
必要な栄養サポート
アスリートが良好な競技人生を送るための栄養サポートの必要性について、講義が展開されました。 選手への栄養サポートとは、日々の食事の献立だけをサポートするのではなく、コンディショニング、身体組成、水分補給、サプリメント、疾病時の食習慣などを管理し、食を通してマネジメントすることだと熱意を込めて語られました。また、アスリートの身体は「省エネな身体」もしくは「超省エネな身体」になっている可能性があり、そのことを考慮して栄養サポートを考えていかなければならないと、参加者の興味をひきつけながら、わかりやすく、笑いを交えての講義となりました。
05ラウンジセッション
司会宮嶋泰子
テレビ 朝日スポーツ局 スポーツコメンテーター
順天堂大学 スポーツ健康科学部 客員教授
自由な雰囲気でのラウンジセッション
巧みなコーディネート
夕食後は、自由な雰囲気でラウンジセッションが行われました。コーディネート役の宮嶋氏が、参加者それぞれの状況・立場に即した質問を投げかけると、参加者はそれぞれの思いを語り始めました。自分の進もうとしている方向性に迷うコーチからの質問には、答えられる参加者が回答し、指導上の論理的な内容については、講師陣が回答するという、理想的なラウンジセッションとなりました。
06コーチのための
キャリアプランニング
講師新井 彬子 早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手
コーチ一人ひとりの
コーチ哲学を引き出す
コーチが自らのキャリアを計画することがなぜ必要であるかが説明され、コーチ一人ひとりのコーチ哲学を引き出すワークが展開されました。また、コーチとしての長期的目標を立て、阻害要因とその分類を行い、自身の目標に合わせ、アクションプランが作成されました。
07DISCプログラム
講師リズ・ハンソン アスリートアセスメント クライアントディレクター
通訳新井彬子 早稲田大学 スポーツ科学学術院 助手
本来のスタイルと
適応型スタイル
参加者は、日本語版「CoachDISC Profile」を事前に実施した上で、講義に臨みました。「CoachDISC Profile」を実施して得られたコーチ行動診断の結果をもとに、自分自身の本来のスタイルと適応型スタイルについて理解を深めました。
DISCプログラムを行うことで、各自それぞれ異なるスタイルがどのスタイルとどの部分で合わないのかを理解することもできることが説明されました。さらに、多種多様なメンバーが集うチームでは、お互いの特性を理解し尊重して、それぞれの特性を持ち寄り、チームの力にしていくという価値観がチームの中に育まれることが大切だと説明されました。また、コーチに行動スタイルの特性があるように、アスリートにもあること、選手の行動スタイルの特性に気づき、理解することが必要であること、さらに、チームのダイナミクスが結果をもたらすため、そのメカニズムに集中することの重要性が説かれました。この日本初の試みは、参加したコーチたちにとって大きな財産となりました。
08メンタル&コーピングスキル
講師田中ウルヴェ京 株式会社ポリゴン 代表取締役
メンタルトレーニングは
なぜ必要なのか
パフォーマンスを発揮するために技術や戦術が必要なように、なぜメンタルトレーニングが必要なのかについて、その理論が説明されました。 そして、「自分は誰なのか?」を知るという自己認識能力の必要性を学び、過去の自身の出来事を振り返り、現在はそれをどう捉えているのかについて視覚的に理解するワークが行なわれました。さらに、感情のコントロール、特にストレスに対して自分がどのように反応するのかを知ることの重要性が説明され、自身のストレスパターンを診断するワークも行なわれました。
メンタル&コーピングスキルの専門家から、コーチングに必要なたくさんの手法が惜しみなく伝えられました。
09コミュニケーションスキル
講師杉山芙沙子
パーム・インターナショナル・テニス・アカデミー 校長
自分と向き合い、自分を知り、
自分を高めていく
アスリートは、スポーツを通して、特に「自分と向き合い、自分を知り、自分を高めていく」能力に優れており、アスリートとしてのパフォーマンスは、スキルと人間力の両方を備えて向上して行くものであることが、調査結果より伝えられました。また、理念とは、スキル(仕事)としてのゴールと、人としてのゴール(デュアルゴール)を設定するための重要な自身の核となる考え方のことであり、この理念を自分自身の中から発見するためのワークも行われました。さらに、聴く力、伝える力についてのワークも実施され、その手法を用いた発表も行われました。
10ワークライフバランス
講師工藤陽子 新日本有限責任監査法人 シニアプリンシパル
人生のステージに合わせて
上手くバランスをとる
仕事、家族、友人、自分の4つカテゴリーを人生のステージに合わせて上手くバランスをとることをワークライフバランスといい、なおかつ、人生の満足度を向上させることであり、その重要性はコーチング現場から上がってきているものであることが説明されました。
妊娠・出産を経験する女性は、プロフェッショナルとしてコーチを続けるためには、職場やパートナーから、ライフイベントごとに合わせたサポートが必要あり、これらのサポートを受けられるようにするためには、ネットーワークを広げることが重要であることが説明されました。そして、ロールモデルを増やすという意味での女性リーダー育成の重要性、リーダーに必要な要素についても語られました。
11チームビルディング
講師高倉麻子 プロサッカー 監督
小林美由紀
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース マネージャー兼コーチ
自分が得た経験のバトンを
次世代につなぐ
昨年開催されたU17の女子ワールドカップにおいて、日本代表は優勝を果たしましたが、女性として日本初の監督を務めたのが高倉麻子さんでした。また、今年はAFC U19女子選手権で優勝し、来年のU20女子ワールドカップ出場を決めましたが、このような結果に繋げる中で大切にしたことは「Japan’s Way(日本サッカー協会が男女問わず掲げているもの)」だったことが伝えられました。日本の強みを生かして、日本らしいチームを作ろうという信念のもと、将来ある若い選手に対して行なってきた、冷静な中にも熱いスピリットが込められたチーム作りが語られました。
自身が現役のころは、女子サッカーをしている人はほとんどおらず、苦労してやってきたことをわかっている世代が、現在の女子サッカー界を牽引していると語りました。そして、自分が得た経験のバトンを次世代につなぎ、その選手たちがその次の世代につないでいって欲しいと願いを込め、講義は締めくくられました。
12リーダーシップ
講師山口香 筑波大学大学院 体育系 准教授
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
理論と実践
全く異なるアプローチからの「リーダーシップ」
講師 小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
リーダーシップは生まれつき備わっているものではなく、行動スタイルであり、個人や組織のゴールに向かってメンバーに影響を与え、動機づけることであるという理論が、リーダーシップの学術的な歴史を踏まえて説明されました。
具体的な学術的理論モデルを示したリーダーシップ理論を学び、さらに、「DISCプログラム」との関連性をみるため、Leadership Scale for Sports (LSS)というコーチのリーダーシップ行動調査も実施されました。
講師 山口香 筑波大学大学院 体育系 准教授
実践から学んだリーダーシップについて、まず、リーダーには「覚悟」が必要であるということ、「覚悟」を持つために、「なぜコーチをやるのか?」を考えなくてはならないことが語られました。また、「相手に伝える能力」が要求され、論理的思考ができるリーダーになる必要があるということについても説明されました。さらに、自信を裏付ける整合性を持ち、なぜそれが結果につながるのか?を選手に説明できなければならず、その整合性を持つためにも学ぶ姿勢を継続させることが大切だと説きました。
2020年東京五輪の目標として「全ての女子種目を女子監督で!」を掲げ、一人ひとりが意識し、自分たちの未来のために、自分たちで声をあげ、自分たちで変革しようと語りかけました。そのためには、指導者自身が自立し、自分のポジションをつかみに行くこと大切だと語り、参加者に勇気を与えました。
13女性スポーツの歴史
講師小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
世界と日本の動き、世界の新たな動き、
日本の今後のアクション
女性スポーツにおける「世界と日本の動き」、「世界の新たな動き」、「日本の今後のアクション」の3つの内容について、講義が展開されました。まず、女性スポーツの歴史(これまでの歩み)を知り、世界の動き、取り組みについて説明されました。持続可能な女性アスリートの支援体制の構築には、スポーツ組織の組織文化を変革し、女性が最大限にスポーツに関わることのできる新しいスポーツ文化の創造が必要であることが語られました。そのためには、優秀な女性リーダー(コーチ)の育成は不可欠であり、その女性リーダーを育成するためには、良い教育と、男性とは違う理想とビジョンを持つ新しいマネジメントの形を作っていく必要があると熱弁がふるわれました。
14スポーツにおけるダイバーシティ
講師マーリーン・ビヨンズロッド
米国女性コーチアライアンス 代表
山口理恵子
城西大学 経営学部マネジメント総合学科 准教授
スポーツ界における
ダイバーシティマネジメントを目指して
競技パフォーマンスが優先となるスポーツ界では勝利至上主義に陥りやすくなり、ここから排除されるトピックスが、男女格差(男女で異なる待遇、機会、収入など)やセクシュアルハラスメント、体罰、セクシュアルマイノリティなどであることが伝えられました。そして、スポーツ界においても多種多様な人が活躍できる場、ダイバーシティマネジメントという考え方が必要であるという説明を受け、セクシュアルマイノリティについて学んだあと、「カミングアウトスター」というワークが行なわれました。自分自身、そして周りの人との関わりについて真剣に向き合う、そんな講義となりました。
15ネットワーキング
「全ての女子種目を女子監督で!」
自発的に生まれた「軽井沢宣言」
ネットワーキングでは、2020年東京五輪に向け、それぞれ自分には何ができるかをチームごとに話し合い、発表するという課題が出されました。チームごとに、さらには、個人が達成したいと発表されたこの目標は、まさに、自身の環境に即したそれぞれの目標となりました。参加者たちは、同じビジョン・目的意識をもった仲間と助け合いながら、実現に向けて努力していくことを誓いました。
また、参加者・講師による自発的な発案により、その意思を記した「軽井沢宣言」が生まれ、参加者、講師、スタッフ全員が署名を行ないました。
軽井沢宣言
私たちは、日本のスポーツ界の発展に向けて、女性の力をさらに活かすために2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会において、すべての女子種目の監督を女性にすることを実現するために行動を起こします。16クロージング・修了式
ベストコーチ賞は、塚田真希さん
修了証授与、感動的なフィナーレ
まず、仲間のコーチたちが選ぶ、ベストコーチ賞の表彰が行なわれました。投票の結果、女性リーダーアカデミー1期生のベストコーチ賞は、塚田真希さんに輝きました。あまりの驚きに動けずにいた塚田さんを、仲間たちのアーチが後押しし、登壇され、ベストコーチ賞の盾を受け取られました。塚田さんから、受賞の感想と目標が述べられました。
共に学び、ディスカッションを重ねてきた仲間・講師との3日間を映像で振り返り、その後、修了証が一人ひとりに授与されました。会場は感動的な空気に包まれました。
最後に、主催者である女性スポーツ研究センターの小笠原悦子センター長より、これから日本の未来を担う女性コーチに向けて、力強いエールが送られました。
参加者、講師、スタッフの間には、まるで1つのチームのような一体感が生まれ、今後の情報交換、目標の実現に向けた努力を誓い、「女性リーダーアカデミー2015」は修了となりました。