Program
開催日程 2020 年 9 月 15日(火)〜 9 月 17日(木)
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Day1
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01オープニング(自己紹介含む)
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02女性とスポーツⅠ
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
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03プロフェッショナルとしてのコーチング
Marlene Bjornsrud (マーリーン・ビヨンズロッド)
米国女性コーチアライアンス 元代表 -
04 女性アスリートのコンディショニング
鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
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05スポーツ栄養
鈴木志保子
神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授 -
06女性とスポーツⅡ
山口 香 筑波大学体育系 教授
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07スポーツとジェンダー
山口理恵子 城西大学経営学部 准教授
小林美由紀
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース 統括責任者
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Day2
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08コーチのためのモチベーション戦略
Nicole LaVoi(ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長 -
09思考と感情整理のメンタルトレーニング
田中ウルヴェ京 株式会社ポリゴン 代表取締役
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10CoachDISCプログラム
Liz Masen (リズ・メイソン)
アスリートアセスメント クライアント・ディレクター
伊藤 真紀 法政大学スポーツ健康学部 准教授 -
11CoachDISCケーススタディ
守屋 麻樹 ローレルゲート株式会社 代表取締役
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12リーダーシップ&コラボレーション
Lisa O'Keefe(リサ・オキーフ)
スポーツイングランド インサイト・ディレクター -
13スポーツにおけるダイバーシティ
山口理恵子 城西大学経営学部 准教授
野口 亜弥 順天堂大学スポーツ健康科学部 助教
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Day3
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14Navigating the Future
for Women Sports Leadersパネリスト:
鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
塚田 真希 東海大学体育学部武道学科 講師
萩原美樹子
WJBL(女子バスケットボール日本リーグ機構) 理事
木原 珠子 和気スイミングクラブ 代表
コーディネーター:
小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長 -
15ネットワーキング
小林美由紀
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース 統括責任者 -
16 修了式・クロージング
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開催形式:オンライン開催講義・運営会場:東京・渋谷 Fスタジオ
主催女性スポーツ研究センター(JCRWS)
共催NPO 法人ジュース(JWS)、WeCOACH
協力アディダス ジャパン株式会社
ユニ・チャーム株式会社
EY Japan
01オープニング
講師鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
関口 晃子 女性スポーツ研究センター スタッフ
初めてのオンライン形式による開催が実現!
6回目を迎えた「女性リーダーアカデミー2020」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を鑑み、オンライン形式での開催を決断しました。オンライン開催は、女性スポーツ研究センターにとって初の試みであり、新たな挑戦でしたが、これにより、「宿泊が難しい」「遠出ができない」「子どもが小さいから」などの理由で今までアカデミーにエントリーできなかった女性たちが参加可能になり、全国各地から熱量の高い女性リーダー・コーチたちがオンライン上に集うことができました。
また、過去5回のアカデミーで学んだ修了生たちも、更なる学びと刺激、情報を求めて、オンラインで修了生にのみ配信されるアカデミーを全国各地で視聴しました。
恒例のアイスブレイクも、これまでとは違った趣向で、参加者の緊張を溶かし、心だけでなく実際の距離を縮められるよう、女性スポーツ研究センターお手製の“YES/NOカード”やWCAロゴ入りの“ホワイトボード”を初導入。心身のウォーミングアップを行い、学ぶための準備が整えられました。
02女性とスポーツⅠ
講師小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
女性スポーツの変遷を学び、新たなスポーツ文化を創造する!
まずは1994年の第1回世界女性スポーツ会議で決議された『ブライトン宣言』、および、2014年の第6回会議で決議された『ブライトン+ヘルシンキ2014宣言』の内容について、その当時の思いと共に解説。小笠原悦子先生は、女性スポーツ発展のための究極の目的を達成するために、世界中の女性(と男性)リーダーが努力していることこそ、「世界における女性スポーツムーブメント」だと語りました。
さらに、女性とスポーツに関する国内外の勇気ある先人たちによって、女性スポーツの歴史が動かされてきたエピソードが伝えられると、参加者たちは、この最初のセッションで学ぶ意欲を高めました。
03プロフェッショナルとしてのコーチング
講師マーリーン・ビヨンズロッド
米国女性コーチアライアンス 元代表
通訳伊藤 真紀 法政大学スポーツ健康学部 准教授
卓越性を求め、常に成長すること
コーチのエネルギーが、チームのエネルギーになる
マーリーン・ビヨンズロッド先生はまず、プロフェッショナルなコーチとして、自分自身のエネルギーをマネジメントすることの重要性について語りました。また、コーチは、技術・戦術を指導するだけでなく、選手の人生にも影響を与える存在となり得ることが伝えられ、そのために必要なマネジメント能力、リーダーシップ能力についての説明がなされました。
マーリーン先生からの「なぜコーチをしていますか?」という問いに対し、参加者は自問自答しながら、自分自身の目指すコーチ像について思考を巡らせました。マーリーン先生のあたたかく包み込むような雰囲気と肯定的な講義内容が、参加者に安心感を与え、和やかで前向きな講義となりました。
04女性アスリートのコンディショニング
講師鯉川なつえ 女性スポーツ研究センター 副センター長
「FAT(Female Athlete Triad)」を学び
コンディショニングからコーチとしての役割を考える
女性アスリートが陥りやすい3つの障害「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad : 以下FAT)」について、研究データに基づき、最新の数値や図表を用いて詳しく解説されました。また、FATの予防や治療に関する最新情報も共有されました。
さらに、鯉川なつえ先生自身が「米国WCA」に参加した際の経験・衝撃などについても語られ、コンディショニング(コンディション管理)の側面からのコーチの役割について、日米の違いなどが紹介されました。その上で、「わからないことがあったら一人で抱え込まないで、これからはアカデミーでのつながりを活かしてほしい」と参加者に呼びかけました。
05スポーツ栄養
講師鈴木志保子 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授
トレーニング計画と栄養サポートの連携
パフォーマンスを、栄養で、マネジメントする
公認スポーツ栄養士の役割とはなにか、選手のパフォーマンス向上につなげるためのトレーニング計画と栄養サポートとの連携の重要性について、鈴木志保子先生より、具体的かつ実践的な視点で、熱弁が振るわれました。また、ジュニアアスリートやトップアスリートに適した栄養素摂取の考え方について、参加者に、わかりやすく、時折ユーモアを交えながら説明がなされました。
そして最後に、「女性アスリートの身体を守るため」「競技力向上のため」には、スポーツ栄養マネジメントが必須であることが述べられました。
06女性とスポーツⅡ
講師山口 香 筑波大学体育系 教授
女性一人ひとりの力でスポーツ界の未来を担う
女性リーダー・役員の必要性や、ここ数年の日本スポーツ界における女性の地位向上について、日本オリンピック委員会(JOC)理事でありJOC女性スポーツ専門部会長である山口香先生ならではの情報が伝えられました。
さらに、スポーツ界を発展させるために女性視点の意見をしっかり持ち、考えを言葉にして活動していくことの重要性を説き、参加者に対し、「ポジションを取り、後に続く女性を育て、バトンを渡していってほしい」と熱いメッセージを送りました。そして、そのためには自らがロールモデルになることが必要なのだと語られ、熱い講義を締めくくりました。
07スポーツとジェンダー
講師山口理恵子 城西大学経営学部 准教授
小林美由紀
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース 統括責任者
女性リーダーが直面する「ダブルスタンダード」
「ステレオタイプ」の実態に気づき、理解する
なぜ、スポーツ界で「女性リーダー」を増やす必要があるのか。また、なぜそれが難しいのかなどの疑問を紐解くために、まずは山口理恵子先生から、スポーツ界の女性リーダーが直面する様々な実態に“気づき、理解すること”の重要性が伝えられました。女性リーダーを増やすための障壁になっていることとして、スポーツ界における女性の「ダブルスタンダード(二重基準:特定の人々やグループに不当に適用されるルールや原則)」、さらには周囲から植え付けられ、また自分自身も内面化してしまっている「ステレオタイプ(女性に対する)」についても解説がなされました。
小林美由紀先生からは、国内で起こったスポーツ界のセクシュアルハラスメントの事例を用いて、その対処方法や二次被害について紹介がなされました。ここでしか聞けないリアルな内容に、画面越しの参加者にも緊迫感が走りました。
08コーチのためのモチベーション戦略
講師Nicole LaVoi (ニコル・ラボイ)
ミネソタ大学 タッカーセンター センター長
通訳野口 亜弥 順天堂大学スポーツ健康科学部 助教
エネルギーをマネジメントする。あなたたちは選手のロールモデル
アカデミー2日目の冒頭、スポーツ界において、「女性であること」「コーチであること」によって起こる障害(問題)について、ニコル・ラボイ先生が語り始めました。そして、女性に押し付けられている「ダブルスタンダード」を解説したあと、スポーツ界における「女性を支援せず、女性に価値を置かない」というシステムを、ボトムアップで変革していきましょうと力説されました。また、コーチであることによって、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に陥る可能性があることが伝えられ、これを打破するための“秘訣”を紹介し、参加者が抱いていた不安や疑問を解決していきました。
最後に、「あなたたちは選手にとって、大切な存在であることを絶対に忘れないでください」という言葉で締めくくり、参加者たちにパワーを送りました。
09思考と感情整理のメンタルトレーニング
講師田中ウルヴェ京 株式会社ポリゴン 代表取締役
感情に気づき、考え方のクセを知る
自分自身の心と向き合うために
田中ウルヴェ京先生は、最初に自身の選手・コーチ時代の経験談として、当時の様々な感情(心)の動きと、それにどう向き合ったかを紹介することから始めました。
次に、感情には様々なタイプがあることを解説。全ての感情が正しく、大事なものであると伝えるとともに、自分自身の感情を否定することは、自分自身を否定することにつながるのだと話されました。そして、まずは自分自身の感情やストレスに気づき、その裏にある考え方のクセを知り、心を整えることが重要であると説きました。参加者たちは大きく共感し、自身を肯定することの大切さに気づきました。
10CoachDISCプログラム
講師Liz Masen (リズ・メイソン)
アスリートアセスメント クライアント・ディレクター
伊藤 真紀 法政大学スポーツ健康学部 准教授
自分と相手の行動スタイルを理解し、コーチとしての求める結果を獲得する
CoachDISCは、性格ではなく、「行動」に着目し、コーチングスタイルを理解するものであると、リズ・メイソン先生より説明がなされると、参加者たちは事前に実施したCoachDISCの結果を食い入るように確認していきました。また、自己理解だけでなく、他者理解にも活用することができるものであると説くと、コーチとして求める結果を得るために、状況を把握(判断)し、お互いの行動スタイルを理解した上で、適切な行動を選択してほしいと参加者に伝えました。グループワークも行われ、伊藤真紀先生は、参加者に対し丁寧な補足指導を加えました。
シンプルでわかりやすいCoachDISCに感銘を受けた参加者たちは、各々の現場で活用しようと目を輝かせました。
11CoachDISCケーススタディ
講師守屋 麻樹 ローレルゲート株式会社 代表取締役
スタイルの違う選手に対して
どのように行動変容していくのか
『CoachDISCプログラム』で学んだことをスポーツ現場で活用するために、守屋麻樹先生主導で、様々なケースを使った演習が行われました。異なる特徴(スタイル)の選手を想定したケースをグループごとに担当し、具体的にどのようにアプローチをしていくかについて、活発に議論を行いました。
発表の場面では、選手のスタイルに応じてコーチ側の行動をいかにを変容させるかについて、他のグループからも客観的な意見が出されるなど、現場さながらの実践的な内容となりました。理論を学んだあとに、すぐに実践に移すことで、理解と習得が深まっている様子が感じ取れました。
12リーダーシップ&コラボレーション
講師Lisa O'Keefe(リサ・オキーフ)
スポーツイングランド インサイト・ディレクター
通訳野口 亜弥 順天堂大学スポーツ健康科学部 助教
ビジョンを描き、人を巻き込む
現場に生きる考え方を学ぶ
イングランドにおけるスポーツ参加に関する数々のキャンペーンをリーダーのポジションで仕掛けてきたリサ・オキーフ先生から「リーダーシップ」「コラボレーション」の考え方をレクチャーいただきました。
また、キャンペーン中の事例をもとに、失敗した原因や成功の鍵などを、リーダーシップ&コラボレーションの観点から、わかりやすく解説しました。様々な局面において、力強くチームを牽引されるリサ先生の実践能力の高さとパワフルさに、参加者は終始圧倒される講義となりました。
13スポーツにおけるダイバーシティ
講師山口理恵子 城西大学経営学部 准教授
野口 亜弥 順天堂大学スポーツ健康科学部 助教
多様性を学び、考える
私たちが知っておくべきこととは
スポーツ界で起こったジェンダー関連の様々な問題について、山口理恵子先生より紹介され、また、「特定のホルモン高値による弊害」「トランスジェンダー」など、アスリートの現場で今なお議論がなされている話題に触れ、スポーツ界におけるダイバーシティの捉え方の難しさについて説明がなされました。
さらに、多様性をテーマに掲げている『東京2020』に向けたLGBT情報発信プロジェクト『プライドハウス東京』の活動に関わっている野口亜弥先生が登壇。リーダーやコーチという立場で、セクシュアルマイノリティをどう理解し、どのように対応していけばよいのかを解説しました。参加者それぞれの立場で、多くのことに思いを巡らせる時間、講義となりました。
14Navigating the Future
for Women Sports Leaders
パネリスト鯉川なつえ
女性スポーツ研究センター 副センター長
塚田 真希 東海大学体育学部武道学科 講師
萩原美樹子
WJBL(女子バスケットボール日本リーグ機構) 理事
木原 珠子 和気スイミングクラブ 代表
コーディネーター小笠原悦子 女性スポーツ研究センター センター長
先輩たちからのあたたかいメッセージ
未来の女性リーダーへ
昨年度に続き、今年は、本アカデミー修了生であり、「ベストリーダー・コーチ賞」を受賞された修了生をパネリストとしてお迎えし、オール日本人のパネリストでディスカッションが展開されました。
今回ご登壇いただいたのは、WCA1期生で、アテネオリンピック柔道女子78kg超級の金メダリストであり、東海大学で講師を務める塚田真希さん。WCA3期生で、現役時代には日本人初のWNBA選手として活躍し、現在はバスケットボール女子アンダーカテゴリー日本代表ヘッドコーチとして指導に当たっている萩原美樹子さん。WCA5期生で、競泳自由形(1,500m)の元日本記録保持者であり、岡山県にある和気スイミングクラブの代表を務める傍ら、日本水泳連盟OWS(オープンウォータースイミング)委員としてOWSの発展・普及にもあたっている木原珠子さん。そして、鯉川なつえ先生を交えた4名のパネリストの体験談や考え、コーチングのポリシーなどについて、惜しみなく語りました。他では聞けないお話を、コーディネーターである小笠原悦子先生が巧みに引き出しました。
続いて行われた質疑応答では、パネリストそれぞれが参加者からの悩みや葛藤を真剣に受け止め、質問者の立場になって回答しました。苦悩やジレンマを味わいながらも、前進し、成功も失敗も経験してきたパネリストの言葉には説得力があり、参加者にポジティブな気持ちと勇気を与えました。
15ネットワーキング
講師小林美由紀
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース 統括責任者
アカデミー3日間の学びを踏まえ
自身は何をすべきか
最後の講義となる「ネットワーキング」では、2015年に行われた最初の「女性リーダーアカデミー」での決意文書である『軽井沢宣言』について学びました。参加者は、アカデミー3日間の学びを踏まえて、自身の「これからの目標・使命」を再考し、共に学んだ仲間たちと共有しました。
最後に、小林美由紀先生は、アカデミーは「参加者みんなが帰れる場所」だと話し、「このネットワークは宝物です。これを活かしてみんなで頑張っていきましょう」と締めくくると、会場内に感動的な空気が流れました。
16修了式・クロージング
画面から伝わる参加者からの熱量
目標に向けて一歩ずつ
修了式では、参加者の投票で決まる『ベストリーダー・コーチ賞』が発表され、選出された中嶋亜弥さんには、2017年に同賞を受賞した萩原美樹子さんより記念の盾が贈られました。
海外にいる講師たちも時差をもろともせずに修了式に参加し、参加者へ心温まる言葉を伝えてくれました。そして、WCA修了証を授与する場面。いつものように手渡しやハグはできませんでしたが、参加者一人ひとりのお名前が呼びあげられると、みな初日とは打って変わった表情で返事をしたり、キラキラした瞳でオリジナルポーズを見せてくれました。
そして、主催である女性スポーツ研究センターの小笠原センター長から、今後のスポーツ界を担う参加者へ「想いが強ければ、人は動いてくれます。“ハート”を伝えることが重要!」と熱いエールを贈り、初のオンライン開催となった「女性リーダーアカデミー2020」が幕を閉じました。
今回のアカデミーは、未来を見据えたアカデミーの新たな形であり、女性スポーツ研究センターとしても、準備の段階から、本番当日を含め、多くの可能性を探求し、挑戦を重ねたアカデミーとなりました。