難治性疾患・再生医療実用化研究室

研究内容

順天堂大学では、2016年に新病院棟が建設され、その一角に新たな研究施設として設置された難病の診断と治療研究センター難治性疾患・再生医療実用化研究室の中心的施設として、大学院研究基盤センターセルプロセシング室及び試験室(実験室・培養室)が整備されました。本施設は主に、細胞治療をはじめとする再生医療等を提供することを目的としており、患者に提供するための細胞を衛生、製造、品質が管理された環境で調製するための施設及びCPCで製造・加工した細胞製品の検査をする施設、さらに臨床に進む前の前臨床試験まで可能とする施設です。

順天堂大学における再生医療の要とも言える細胞調製施設、すなわちセルプロセッシング室(CPC)は、再生医療等の細胞を用いる治療に供する検体を調製するための施設として厚生労働省に届け出が行われており、約200㎡のスペースに清浄度管理された環境下で治療に供する細胞を調製できる細胞調製室が4室備えられています。その内訳は、重要区域(グレードA)としてアイソレーターが設置されたグレードC管理の閉鎖系調製室が1室、安全キャビネットを各部屋1台設置したグレードB管理の開放系調製室が2室のほか、今後の本学の再生医療の発展に合わせて衛生管理グレードの変更を含め拡張可能なスペースとして1室(現状グレードC管理)確保されており、各部屋独立した細胞調製が可能でアカデミアにおけるCPCで要求される多様性のある共同利用施設となっています。

これら調製室以外に細胞凍結保存用液体窒素タンクを備えた細胞保管室、細胞調製室で使用する培養器材等を一時保管するための器材保管室のほか、細胞加工工程の指示、調製過程を記録するための製造工程管理システム、空調機器の運転状況や室内環境を監視するためのモニタリングシステムを備えています。本CPCは再生医療安全性確保法における細胞培養加工施設の構造設備基準に適合した施設として届出がされており、製造・品質・衛生管理基準書や手順書に沿った運営・管理を実施しています。さらに将来的に再生医療等製品の製造や品質管理の基準であるGCTP省令に適合するため、品質保証体制などの構築を目指しています。

難治性疾患・再生医療実用化研究室にはCPCの他にCPCで加工・製造された再生医療等に供する細胞の機能・品質を検査するための試験室が培養室、実験室として整備されています。培養室には安全キャビネット4台のほか、冷却遠心機、CO2インキュベータ、位相差顕微鏡など培養に必要な機器を備えています。試験室には細胞の品質管理のための機器として、無菌試験のためのバクテック、エンドトキシン否定試験のためのトキシノメータ―、マイコプラズマ否定試験に使用するPCR装置、トランスイルミネータ、冷却遠心機のほか、細胞の品質特性、機能等を検討するためにセルソーターFACS Aria III が備えられています。これらの試験室は、CPCで培養された細胞の試験だけでなく、これから実用化を目指す再生医療の実用化基盤研究のためにも使用されています。

難病の診断と治療研究センターには、これらの研究施設のほかに実際に再生医療等に供するための検体採取や再生医療を受けた患者の検査、患者への同意説明のために使用されている処置室が備えられています。処置室には患者用の簡易ベッドや各種検査機器が設置されているほか、PRP(多血小板血漿)治療に供する検体を調製するために遠心機、クリーンベンチが備えられており、前述のCPCとは独立した細胞加工施設として厚生労働省へ届け出がなされています。

現在、当室ではAMED事業「ナショナルコンソーシアム事業」(日本再生医療学会)及び「再生医療等臨床研究推進拠点病院の確立」(大阪大学)に一環として、学内外に対する再生医療臨床研究実施に関する支援(~2020年度)を実施しております。
以上のような施設において、現在難病の診断と治療研究センター難治性疾患・再生医療実用化研究室では、以下に示す再生医療の基盤構築研究から実用化を目指す臨床研究・治験や実際の患者様へ届ける診療のための活動が行われています。

実施責任者 研究課題名 研究内容
田中 里佳
(再生医学・形成外科)
難治性潰瘍に対する生体外増幅末梢血単核球による治療 重症下肢虚血性潰瘍に対して自己末梢血より単離した単核球(MNC)を生体外増幅培養(QQ培養)法に供したMNC-QQ細胞を用いた臨床研究を再生医療等安全性確保法下で第2種再生医療として実施しています。さらにこの治療を世界中どこでも受けられるように薬事承認を目指した治験のための開発を進めています。(難病の診断と治療研究センター共同研究)
脂肪移植におけるヒト生体外増幅血管幹細胞を用いた血管再生の効果の検討 乳がん術後の乳房再建や脂肪萎縮症の治療などで脂肪移植が行われていますが、移植組織の生着率の低さや繊維化のなどの課題が指摘されています。これらの課題に対して生体外増幅末梢血単核球と脂肪組織由来幹細胞を脂肪移植時に混合することで、移植効率や効果性の向上を目指しています。(難病の診断と治療研究センター共同研究)
安藤 美樹
(血液内科)
子宮頸がんに対するiPS細胞由来ユニバーサルCTL療法の開発 iPSC技術を用いてヒトパピローマウイルス特異的細胞傷害性CTLを作製し、子宮頸がんに対する治療開発を行っています。HLAをゲノム編集してひとつのiPS細胞から多くの患者に迅速に使用できる技術を開発しています。(AMED再生医療実現拠点ネットワークプログラム(技術開発個別課題))
EBウイルス関連リンパ腫に対するiPS細胞由来CTL療法の医師主導型臨床研究 難治性リンパ腫に対するiPSC由来EBウイルス特異的CTL療法の非臨床試験を行っています。また、固形がんも含む難治性の腫瘍をターゲットとしたiPSC技術を用いるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、T細胞受容体療法の開発も行っています。
神垣 隆
(次世代細胞・免疫治療)
エフェクター細胞の新規単離培養技術の開発 固形癌患者さんの様々なTリンパ球を細胞リソースとして、遺伝子導入技術を用いて腫瘍特異的Tリンパ球の樹立を目指しています。

https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/next-i/

松下 訓
(心臓血管外科)
重症心不全に対するヒト(自己)骨格筋由来細胞シート(ハートシート®)治療 虚血性心疾患を原因とした重症の心不全の方を対象とした治療です。ご自身の太ももの筋肉(骨格筋)を採取し、そこから培養した細胞(筋芽細胞)をシート化して、心臓表面に移植します。現在のところ、世界で唯一の保険診療で認められた重症心不全に対する再生医療製品となります。
内田 浩一郎
(健康総合科学先端研究)
誘導型抑制性T細胞を用いた臓器移植における免疫寛容を目指した第1/2相 多施設共同医師主導治験 レシピエント由来リンパ球を抗CD80抗体及び抗CD86抗体存在下で、放射線処理を行ったドナー由来リンパ球と共培養することにより、ドナー特異的に免疫反応を抑制する誘導型抑制性T細胞を作成します。この細胞を臓器移植後のレシピエントへ投与することで、移植臓器に対する免疫寛容を獲得し、免疫抑制剤の減少あるいは中断が期待されています。
iPS再生組織・細胞移植における拒絶反応の免疫指標の確立と、誘導性抑制性T細胞を用いた再生組織の長期生着・免疫寛容の誘導(AMED奥村班) iPS心筋シートに対する免疫拒絶反応の制御を目的に、iPS253G1株から心筋シートとT細胞を誘導し、心筋シートに対する選択的抑制性T細胞をiPST細胞と共刺激分子に対する抗体を用いて作成し、機能を確認しています。(安藤プロジェクトと共同研究)(AMED再生医療実現拠点ネットワークプログラム(技術開発個別課題))
齋田 良知
(整形外科)
変形性膝関節症患者の血中および関節液中のバイオマーカーの検討 患者の血中・関節液中・尿中・多血小板血漿(PRP)中のバイオマーカーが変形性膝関節症に対する治療の効果に及ぼす影響の検討を行っています。さらに当施設の処置室を細胞加工施設として用いて、変形性膝関節症やスポーツによる靭帯損傷等に対し自己多血小板血漿(PRP)注射を用いた治療を自由診療として実施しています。

https://www.juntendo.ac.jp/hospital/patient/other/prp.html

難病の診断と治療研究センターを使用して実施される再生医療等

再生医療等安全性確保法下の臨床研究及び自由診療

第2種再生医療等提供計画(研究)

・複数回投与自己末梢血単核球生体外培養増幅細胞(MNC-QQ)の難治性虚血性下肢潰瘍患者を対象とした第1 / 2相臨床研究

・難治性四肢潰瘍患者を対象とした自己末梢血単核球生体外培養細胞移植による血管・組織再生治療に関する第Ⅰ相試験臨床研究(終了)

第2種再生医療等提供計画(治療)

・自己多血小板血漿(PRP)療法(治療対象:関節炎・変形性関節症)

第3種再生医療等提供計画(治療)

・自己多血小板血漿(PRP)療法(治療対象:筋・腱・靭帯損傷)

医師主導治験

・誘導型抑制性T細胞を用いた臓器移植における免疫寛容を目指した第1/2相 多施設共同医師主導治験(9月開始予定)

保険診療

・ハートシートを用いた重症心不全治療