老研セミナーのお知らせ:2024年9月26日(木)午後4時−5時 群馬大 小湊慶彦先生
老研セミナー
骨髄異形成症候群患者における血液型抗原減少の機序の解明
小湊慶彦 先生
群馬大学特別教授(法医学、全医学部長)
日時:2024年9月26日(木)午後4時−5時
場所:7号館13階 有山記念ホール
我々はABO式血液型遺伝子の転写制御機構を研究してきた。公表されているゲノムアノテーションデータを利用して、ABO遺伝子の転写調節領域や結合する転写因子を推定し、実験的手法を用いて転写調節に関与するシスエレメントであるプロモーター、第1イントロン内に血球特異的エンハンサー+5.8-kb site、遺伝子下流に上皮細胞特異的エンハンサー+22.6-kb site等を同定し、+5.8-kb siteに転写因子RUNX1とGATA2が作用し、+22.6-kb siteに転写因子Elf5が作用することを明らかした。次いで赤血球表面上の抗原が減少する血液型亜型のゲノムDNAを用いた人類遺伝学的検索から+5.8-kb siteに変異を見いだした。以上より、ABO式血液型遺伝子の転写調節領域を解明した。これらの知見に基づいて、日本人において血液型亜型の半数を占めるBm型の遺伝子診断方法が開発され、日本赤十字社の血液型検査において利用されている。また、+22.6-kb siteはABO遺伝子の43.6-kbセントロメア側にあるOdorant Binding Protein 2 (OBP2B) に影響を及ぼすことを見い出し、ABOとOBP2B がTopologically Associating Domain内に存在することを示した。さらに、白血病患者においては赤血球の血液型抗原減少が知られているが、骨髄異形成症候群の患者13名を調べたところ、赤血球表面上のA抗原減少の見られた患者2名においてはRUNX1とGATA2に変異が認められ、レポーターアッセイにおいてはそれらの変異は転写活性低下に至ることを示した。一方、赤血球表面上のA抗原減少の見られない患者13名においてはRUNX1とGATA2のコード領域に変異が認められなかった。骨髄異形成症候群の患者ではRUNX1とGATA2に変異が認められることが知られているので、そのような場合には赤血球の血液型抗原減少が生じることが示唆された。以上、我々はABO式血液型遺伝子の転写制御機構を解明し、それらの結果は臨床検査に応用されるに至っている。
参加自由です。皆様のご参加をお待ちしております。
【問い合せ先】内山安男 (y-uchi@juntendo.ac.jp) 内線3768
谷田以誠 (tanida@Juntendo.ac.jp) 内線3601