老研セミナーのお知らせ: 2025年6月25日(水)午後4時〜 北海道大学 渡辺雅彦先生&旭川医科大学 渡部 剛先生

2025.05.23

老研セミナーのお知らせです。

グリオキサール:ホルマリンに変わる革新的な組織化学用固定剤

  渡辺雅彦先生(北海道大学・医学研究院・教授)

哺乳動物細胞におけるゴルジ装置の大局的構造:その多様性と構造維持機構

  渡部 剛先生(旭川医科大学大学院医学研究科・教授)

期日:2025年6月25日(水)午後4時から

場所:10号館1階105室

どなたでもご参加いただけますので、奮ってご参加ください。

 

 

グリオキサール:ホルマリンに変わる革新的な組織化学用固定剤

渡辺雅彦先生(北海道大学・医学研究院・教授)

ホルマリン(4%パラホルムアルデヒド、以下PFA)は抗原性を失活させずに防腐を防ぐ化学的固定剤として、組織化学や病理学の分野で最も頻用されているアルデヒド系固定剤である。2018年EMBO Journalに、グリオキサールという別のアルデヒドが免疫組織化学に適し、固定のスピードと力価と抗原性の保持の点でPFAを凌駕する固定剤であると報告された。抗体を用いたシナプス分子検出の問題と長年取り組んできた我々は、早速その有効性を検証し改良も試みた(Konno et al., Sci Adv, 2023)。

その結果、PFA固定では抗体はシナプス後部やシナプス間隙に局在する分子には到達できず、その検出には抗原露出法を加える必要があったが、グリオキサール固定ではそのような方法なしで、容易に検出できることがわかった。さらに、これまで抗原露出法なしで普通に染まるシナプス前部やシナプス外分子の検出強度が、PFA固定に比べて著しく増強することが判明した。実例は講演において提示する。

以上の結果は、PFAは抗原性の失活を伴う固定剤でありその失活の程度がグリオキサール固定により軽減されること、従来抗体のアクセスが制限されるコンパートメントの分子に対してもグリオキサール固定組織ではその制限が軽減されることを物語る。組織化学的検出に問題を感じた際には一考する価値のある固定剤である。

 

哺乳動物細胞におけるゴルジ装置の大局的構造:その多様性と構造維持機構

渡部 剛先生(旭川医科大学大学院医学研究科・教授)

 ゴルジ装置は細胞内小胞輸送経路上で粗面小胞体(rER)の下流に位置し、分泌蛋白やリソソーム酵素、細胞膜蛋白などの糖鎖修飾やプロセシングを担っている。ゴルジ装置は3〜5層程度積層した板状のゴルジ槽の集合体であり、rERに面した側からcis、medial、transの3区画に区分され、さらにこの入口と出口に相当するcis側とtrans側には小胞体-ゴルジ中間区画(ER-Golgi intermediate compartment; ERGIC)とトランスゴルジ網(trans-Golgi network; TGN)と呼ばれる移行区画が近接して、ゴルジ装置を中心とした選別輸送の制御を行っている。生体で高度に機能分化した哺乳動物の細胞では、このゴルジ装置の基本単位が側方で連結して細胞種ごとに特徴のある大局的構造を呈しており、分泌経路に沿った微小管依存性の細胞内小胞輸送のバランスで、この大局的構造は維持されている。
今回のセミナーでは、生体内で高度に分化した様々な細胞におけるゴルジ装置の大局的構造の多様性について概説するとともに、コルヒチン腹腔投与動物モデルの細胞におけるゴルジ装置の経時的な形態変化から、ゴルジ装置の特異な大局的構造の維持に微小管が果たす役割について議論したい。

 

【問い合わせ先】  老人性疾患病態・治療研究センター 内山安男(内線3505)・谷田以誠 (内3601)