第8回 IWG世界女性スポーツ会議参加報告
スポーツにおけるジェンダー平等を推進する世界で最も有名な会議である「世界女性スポーツ会議」。第8回となる今回は、2022年11月14日〜17日、ニュージーランド・オークランドで開催されました。
「スポーツを通じたジェンダー平等推進事業(以下;本事業)」では、グローバルなスポーツとジェンダー平等の議論を理解し、多様な専門家や専門組織とのネットワーク作り、さらに本事業の進捗や成果を国際的なスポーツとジェンダーの専門家に発信する機会として、ASEAN各国関係者の「世界女性スポーツ会議」への参加を支援しました。
ニュージーランドのJacinda Ardern首相のビデオメッセージで始まった同会議は、4日間で約1200名が現地で、オンラインでは約500名が参加。約500名の国際色豊かなスピーカーによる220以上の興味深いセッションが提供され、多くの連携が生まれました。
会議3日目の11月16日には「Promoting Gender Equality in Sport in Asia by Using the Momentum of Tokyo2020」のタイトルの下、スポーツ庁、ASEAN事務局、タイ政府、ASEAN各国からの関係者と共に、次のようなグループプレゼンテーションを実施し、会場に集まった約20名の参加者と意見交換を行いました。
野口亜弥氏
【グループプレゼンテーション】
東京2020大会を契機としたアジアのスポーツにおけるジェンダー平等の推進
Promoting Gender Equality in Sport in Asia by using the momentum of Tokyo 2020
2部構成(合計90分)で実施されたグループプレゼンテーションは、本事業のプロジェクト運営リーダーを務める順天堂大学スポーツ健康科学部助教の野口亜弥氏が司会を務め、まずは本事業の概要紹介からスタートしました。
本事業の背景にあるプロジェクト「Sport for
Tomorrow」をはじめ、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会期間中に日ASEAN統合基金(JAIF)の支援によって開催された「ASEAN-JAPAN Working on Promoting
Gender Equality in Sports」事業での成果が共有され、本事業についてはスポーツ庁の独自予算により計画されていること、その予算に基づく事業計画などが紹介されました。
穴見翠氏
<Session1>
スポーツ庁女性スポーツ推進専門官の穴見翠氏より、日本政府が取り組む“スポーツにおけるジェンダー平等”の施策が共有されました。冒頭、東京2020大会について「歴史上で最もジェンダー平等なオリンピック・パラリンピックであった」と触れながら、ハイパフォーマンス領域(トップレベル)の女性リーダー・指導者不足、障がい者スポーツ、学校体育など、多角的な側面から、日本のスポーツ政策を紹介しました。
シニアオフィサー
Larasati Indrawagita氏
続いて、ASEAN事務局青少年スポーツ局のシニアオフィサーである、Larasati Indrawagita氏より、ASEAN諸国における女性のスポーツ実施率向上を目的に実施された「ASEAN WE SCORE Break records, make history!」について、情報提供がなされました。また、アセアン事務局が各国と連携して取り組んでいる、スポーツを通じたジェンダー平等を推進するためのプロジェクトにおいて、各国で活躍する女性アスリートをアンバサダーとして起用したことを紹介したIndrawagita氏は、「スポーツは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進するプラットフォームになりえる」と、各国アンバサダーの思いを代弁しました。
Niwat Limsuknirun氏
<Session2>
タイ観光スポーツ省体育局事務局長のNiwat Limsuknirun氏からは、タイの事例として、タイ政府のスポーツ政策におけるジェンダーの主流化について発表がありました。タイ政府は“スポーツ・フォー・オール(みんなのためのスポーツ)”に重きを置いていること、さらに「マラソンや体操など、日常的にスポーツと触れ合う機会を全てのタイ国民に提供したい」という自身の思いが述べられました。また、テコンドーやウエイトリフティング、バレーボール、キックボクシングなど、タイで女性が活躍する競技についても紹介されました。
会場の登壇者たち
後半では、会場とオンライン参加者をつなぎ、ASEAN(全10か国)からのオンライン参加者らも交え、活発なディスカッションが行われました。
ブルネイの政府関係者は、2021年に、日本・順天堂大学において開催されたワークショップ「ASEAN-JAPAN Working on Promoting Gender Equality in Sports」での経験を共有し、どのように女性のスポーツ参画を促す施策を実施しているのかについて、情報を提供しました。
マレーシアからの参加者は、「(日本の)スポーツ庁が取り組んでいる、子どもにフレンドリーな施設づくりに大変興味を持った」とコメント。また、シンガポールの参加者は「(女性の割合をルールで決める)クオート制は良い取組であり、自国でも実践している」と、国際的な会議に参加したことによって自国の取組を考える貴重な時間であったと語りました。
小笠原悦子氏
さらに、女性とスポーツの国際団体「Women Sport International」、日本女子プロサッカーリーグ「.WEリーグ」、「アジア・ニュージーランド財団」の代表者から、ASEANと日本のパートナーシップに対する前向きなコメントと更なる発展のための支援が表明されました。
最後に、IWGグローバルエグゼクティブ(アジア代表)であり、本事業実施団体である順天堂大学女性スポーツ研究センターセンター長の小笠原悦子氏が登壇し、まず、2021年8月に開催したワークショップ「ASEAN-JAPAN Working on Promoting Gender Equality in Sports」についてお礼を述べ、本セッションの盛会について、登壇者、参加者にお礼を申し上げて締めくくりました。
最終日には、IWG会議開催事務局より「Call to Action」が発表され、様々な国から推薦された11名の若年女性リーダーが行動を呼びかけるステートメントを読み上げました。その中には、本事業により日本から参加した若手人材も選出されました。このことは、本事業の目的の一つである、スポーツにおけるジェンダー平等推進を担う日本の若手グローバル人材の育成を実現するうえで、実に有意義なことといえます。
本事業業務に携わる折目真地氏は「スポーツにおけるジェンダー平等とは何なのかを多角的に考え、国際的な動きの中で日本におけるジェンダー平等を俯瞰的に考える機会になった」と、Call to Actionの壇上で語りました。2021年のワークショップ「ASEAN-JAPAN Working on Promoting Gender Equality in Sports」にも携わった橋本紗英氏からも「セッションの聴講だけでなく、ジェンダー平等に日々取り組む世界各国の参加者との議論が非常に有意義だった」という感想が聞かれ、この会議が若い二人にとって大きな刺激となったことが伺えました。
本事業より参加したASEAN10か国の参加者からは、次のようなコメントが届きました。
「世界中に学べるベストプラクティスが十分にあり、それらを応用していくことで、自国においてステークホルダーから賛同を得るためのプロセスが、より簡単でスムーズになると確信した」
「女性のスポーツ参加を促進するためには、エビデンスに基づく統計データが不可欠であるため、女性のスポーツ参加に関する調査や障壁の検証を行いたい」
4日間にわたる世界女性スポーツ会議での学びは、参加者にとって自国の女性スポーツ発展に向けた次のステップを検討するための貴重な財産となり、本事業におけるプロジェクトをさらに後押しするものとなりました。