頚部内頚動脈狭窄症に対するステント治療
心臓から分岐した総頚動脈は顎の近くで枝分かれしますが、その中でも脳に向かう内頚動脈はとても重要な血管です。この内頚動脈の起始部分は、動脈硬化による脂や血栓の塊(プラーク)が形成されやすい部位で、プラークが多くなると内頚動脈が狭くなり「頚動脈狭窄症」と言う状態になります。このような状態では、脳に十分な血液が届かなくなったりプラーク自体が壊れた時にその一部が血流に乗って飛散して脳梗塞になります。この頚動脈狭窄症に対して、全身麻酔下に頚部を切開して直接的にプラークを除去する血栓内膜剥離術が行われてきましたが、最近では「ステント」と呼ばれる網目の金属円筒を留置することで狭くなっている部分を広げるステント治療が非常に多く行われるようになっています。
多くの場合、足の付け根にある大腿動脈からやや太め(2〜3 mm)のガイディングカテーテルを進め、レントゲン透視で確認しながら狭くなっている部分をバルーン(風船)カテーテルで広げつつステントを留置して、脳への血流を改善させます(図7A/B)。 頚動脈狭窄症の患者さんは、心臓の血管や糖尿病・脂質異常症などの基礎疾患を有している方が多いので、ステント治療は体に負担が少なく全身麻酔にリスクがある患者さんでは局所麻酔で治療できることも大きなメリットです。