超急性期脳梗塞に対する脳血栓回収術

脳は、体重の2%程度しか重さしかありませんが、心臓から送り出される血液の約 20% も必要とする特殊な臓器なのです。このため、少しの時間でも脳に血液が行かなくなると神経細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなるので最終的には脳梗塞になってしまいます。最近は、高齢の方に多い不整脈などが原因で心臓内に血のかたまり(血栓)ができて、突然それが飛び散って脳の血管が詰まってしまう心原性脳塞栓症が増えています。
完全な梗塞に陥ってしまった神経細胞の機能は元通りには回復しませんので、麻痺や言葉の障害、意識障害など様々な脳虚血症状を出して後遺となり、時には生命に危険を及ぼします。しかし、脳に血液が行かなくなっても、瞬時に脳梗塞になるのではなく、一定の時間は神経細胞の機能が低下なるいは停止状態になっています。この間に、血液を再び流すことができれば脳梗塞になることを防いだり、その範囲を小さくすることが出来ます。
この考え方から、脳梗塞の発症から4.5時間以内の場合は血の塊を溶かす薬を静脈から点滴することによって、脳の血液の流れを再開させる治療(t-PA 静注療法)が行われています。しかし、発症から4.5時間を越えていたり、様々な理由により血栓を溶かす薬を使用できない方は t-PA 静注療法を受けることができません。また、大きめの血栓が血管を詰めてしまった時には溶かす薬の効果は高くないとされています。そこで最近は、詰まっている脳の血管までカテーテルを挿入し、機械的に血栓を取り除くことによって血液の流れを再開させる「血栓回収療法」が数多く行われるようになっています(図9A/B/C/D)。この治療法により、脳主幹動脈急性閉塞症の治療は急速に進歩しました。この治療は、発症から再開通するまでの時間が短いほど、患者さんの後遺症が軽減することがデータで示されています。

 

血栓回収療法の放射線学的画像