「PPE for female athletes(Pre-participation Physical Evaluation; 女性アスリートの運動参加前健康評価)」は、女性アスリート・パラアスリートの健康と安全の維持を支援するため、研究エビデンスに基づき開発した、女性アスリートのためのオンラインヘルスチェックツールです。
PPE for female athletesとは
我が国における女性アスリート・パラアスリートの競技力は年々向上しています。
しかし、ハイレベルなパフォーマンスを求めるあまり、自身の健康を顧みず、ついつい頑張りすぎることで健康を害している傾向もみられています。またコーチング現場においては、女性アスリート・パラアスリートの身体的特徴、基礎疾患やアレルギー等を把握する健康評価と、それに基づく指針がないため、「練習量や質の見極め」はコーチの経験値に委ねられているのが現状です。そのため、健康障害が引き起こされるまで運動をし続けてしまうことが、大きな問題といえます。
そこで、過去の病歴・障がい歴(メディカルヒストリー)と現在の健康状態を定期的にチェックし記録することは、適切な運動強度で健康に競技を続けるうえで必要であり、それらを指導者やサポートスタッフと共有することも大切です。
特に女性アスリートが陥りやすい3つの障害(利用可能エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗鬆症:Female Athlete Triad;FAT)の予防は早期発見が有効であり、病気の兆候がみられたら、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要です。
女性スポーツ研究センター( JCRWS ; Japanese Center for Research on Women in Sport )は、2019年度・2020年度スポーツ庁委託事業 女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究」により、「PPE for female athletes(Pre-participation Physical Evaluation for female athletes ;女性アスリートの運動参加前健康評価)」を開発しました。2021年度より、順天堂大学女性スポーツ研究センターが保守運用を行っています。
鯉川なつえ
女性スポーツ研究センター 副センター長順天堂大学スポーツ健康科学部 教授
研究代表者からのメッセージ
PPEは必ず「シーズン前後」に実施してください!
女性アスリートの皆さんは、PPE for female athletesを活用して怪我や病気を予防し、健康な身体で運動に参加してください。健康な状態で運動参加することは、長期的に高い競技力を発揮することにつながります。
さらに、アスリートをサポートする指導者やサポートスタッフにとっても、結果として、国際的に活躍できる女性アスリート育成を推進することにつながるでしょう。
「PPE for female athletes」公開に先駆け2月11日にオンライン開催された「女性アスリートアクティブサポートセミナー2021」で紹介され、パネルディスカションにご登壇いただいたパネリストやセミナー開催後の参加者アンケートにおいて、期待を寄せるコメントをたくさん頂戴しています。
その一部をご紹介いたします。
パネルディスカション登壇者より
塚田 真希
東海大学体育学部武道学科 講師東海大学女子柔道部 監督
コロナ禍をはじめ様々な環境にも対応可能で、アスリート自身がセルフマネジメントできる「PPE」は、時代に合ったツールです。これから、シーズン前、大会前など、学生のコンディションチェックに活用したいと思います。
川上 優子
キヤノンアスリートクラブ九州 監督エネルギー不足だったと思い当たる節があり、私が現役の頃にあったらよかったのにと思いました。感覚や気持ちで乗り越えることには限界があり、客観的に自分をみつめることができる「PPE」は、予防にも適していると思います。
高澤 祐治
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 教授順天堂大学医学部整形外科学講座 先任准教授
「PPE」はアスリートのコンディショニングチェックのみならず、医学の分野におけるプレホスピタル・スクリーニングとしても重要になってくるでしょう。
北出 真理
女性スポーツ研究センター 副センター長順天堂大学大学院医学研究科産婦人科学 教授
エビデンスに裏付けられ作成された「PPE」に、感銘を受けました。女性アスリート外来に来られる女性アスリートにも、ぜひお奨めしたいと思います。