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「女性アスリートヘルスサポートセミナー2020」を開催しました!

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2020.04.02

「女性アスリートヘルスサポートセミナー2020」開催報告

女性アスリートに注目してほしい「LBM ; Lean Body Mass(除脂肪体重, 以下LBM)」をキーワードに、「女性アスリートヘルスサポートセミナー2020」を開催しました。
 
成長に応じた体重増加が見られない「エネルギー不足」の女性アスリートを危惧する声が高まっている日本のスポーツ界。これからは、体脂肪を減らすのではなく、「LBMを増やす」という認識が求められていますが、女性スポーツ研究センターでは、身長とLBMによるコンディション管理を提唱しています。

本セミナーでは、「LBMを増やせば身長が伸びる」ことを研究によって導き出した松田貴雄先生による基調講演をはじめ、女性アスリートにとって大変重要な「運動」「睡眠」「栄養」の専門家をお招きし、トップアスリートに導くためのLBM活用法をテーマにディスカッションを展開しました。

00会場全景

※本セミナーは、スポーツ庁委託事業「女性アスリートの育成・支援事業」(再委託)として実施しました

【プログラム】

<基調講演>

「LBMを増やせば身長が伸びる!」 
 松田 貴雄(独立行政法人国立病院機構 西別府病院 スポーツ医学センター センター長) 

<成長サポートアプリ紹介>
「『スラリマッスル』アプリ ~LBMを増やして、スラリと背を伸ばそう!~」 
 関口 晃子(女性スポーツ研究センター) 

<ミニセッション>
「女子バレーボール選手での対応事例」 
 柴田 昌奈(バレーボール女子日本代表 ストレングスコーチ)
「アスリートと睡眠」 
 井下 綾子(順天堂大学医学部 准教授)
「パフォーマンスを、栄養で、マネジメントする」 
 鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 教授、公認スポーツ栄養士)
 
<パネルディスカッション>
「LBMでトップアスリートをマネジメントする」 
パネリスト柴田 昌奈  井下 綾子  鈴木志保子
コーディネーター:
鯉川なつえ(女性スポーツ研究センター副センター長 / 順天堂大学 スポーツ健康科学部 教授)

基調講演

婦人科の医師であり、日本スポーツ協会認定スポーツドクターとして、様々なアスリートをサポートしている松田貴雄医師により、「LBMを増やせば身長が伸びる!」をテーマに基調講演が行われました。
研究エビデンスを元に開発されたアプリ「スラリマッスル」の共同開発者である松田先生は、長年の研究や治療の現場からの知見をもとに、成長期アスリートにとって大切な成長スパートと成長ピークとは何か、成長ピークがないことのリスクなどを解説。さらに、アスリートの体格指数として世界の標準となっているのは「LBM」であり、体重コントロールからLBMコントロールへとスイッチすることで、女性アスリートの三主徴「Female Athlete Triad; FAT」を招くことのないコンディション管理をしてほしいと訴えました。

基調講演01

松田 貴雄 医師
(独立行政法人国立病院機構 西別府病院 スポーツ医学センター センター長)

基調講演02

質疑応答では、女子アスリートを指導している男性からも質問が寄せられました

「スラリマッスル」アプリ紹介

順天堂大学女性スポーツ研究センターと独立行政法人国立病院機構西別府病院が、2018、2019年度スポーツ庁「女性アスリートの育成・支援事業(再委託)」の一環で実施した調査を基に開発した、アスリートのための成長・コンディション管理アプリ「スラリマッスル」を発表しました。
女性スポーツ研究センタースタッフの関口晃子が使い方を詳しく説明、基調講演者である松田先生の解説を交えながら紹介しました。

「スラリマッスル」アプリは女性スポーツ研究センターのウェブサイトからダウンロードできます

アプリ紹介

ミニセッション

「LBMでトップアスリートをマネジメントする」と題したパネルディスカッションに先立ち、成長する女子アスリートを支えるための大切なポイント、また、LBMでのコンディション管理の重要性について、3者それぞれの立場から解説いただくミニセッションが展開されました。
 
女子バレーボール選手での対応事例

東京2020でのメダル獲得を目指すバレーボール女子日本代表の柴田昌奈ストレングスコーチは、世界の強豪国との体格差が大きい日本チームがすべきこととして、“筋力の向上”の重要性を挙げました。
そして選手たちには、体脂肪ではなくLBMを使ったコンディション管理を徹底していると話し、LBMがなぜアスリートに必要なのかを「スラリマッスル表」を活用して選手に説いていると話しました。また、「チームスポーツは、全選手のフィジカルコントロールが重要」だとしながら、選手の個性に応じて、トレーニングや栄養プログラムの個別化をはかることも大切だと、実例を挙げて説明しました。

ミニセッション01

柴田 昌奈 さん
(バレーボール女子日本代表ストレングスコーチ)

ミニセッション02

井下 綾子 医師
(順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座 准教授)
アスリートと睡眠

順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座准教授であり、順天堂医院睡眠・呼吸障害センター副センター長を併任されている井下綾子医師より、「アスリートと睡眠」ならびに「小児の睡眠障害」について講義がなされました。
男性アスリートに比べ女性アスリートは睡眠時間が短く、それには月経が関与している可能性があることを、研究エビデンスを示しながら解説しました。また耳鼻咽喉科医としての知見から、睡眠における鼻の役割や、睡眠時に鼻呼吸をすることが質のよい睡眠、競技パフォーマンスにも良い効果をもたらすと説明。正しい鼻呼吸に導くための“舌の筋トレ”方法も紹介しました。
パフォーマンスを、栄養で、マネジメントする

日本スポーツ栄養協会理事長であり、公認スポーツ栄養士としてトップアスリートからジュニアアスリートまで幅広く栄養指導を行っている鈴木志保子先生。最初に、アスリートの栄養摂取の考え方について説明し、スポーツ栄養士がアスリートから求められている役割、アスリートのためにどのような仕事をしているのかについて解説しました。その上で、食べることがパフォーマンスに影響するため、エネルギー不足にならないようにバランスよく食べることの意義を説きました。
また、これまでの経験から、トップアスリートが成果を上げるためには、一人ひとりのアセスメント(現状把握)を明確にし、エビデンスを個々の状態に合わせてアレンジした栄養指導をしていくことが大切だと熱く語りました。

ミニセッション03

鈴木志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科 教授)

パネルディスカッション

パネルディスカッション01

パネルディスカッション02

コーディネーターを務める鯉川なつえ副センター長は、ミニセッションによって“個別アプローチの重要性”を感じたと感想を話し、ディスカッションをスタートさせました。
オリンピックまで日本代表チームとずっと寝食を共にするという柴田さんは、監督と選手、両方の声を聴くことができる立場として心がけていることなどを披露しました。
質疑応答では、アスリートの保護者や指導者から、睡眠についての質問が多く寄せられ、いびきや就寝前のスマートフォンがどう影響するのかを井下先生よりお答えいただきました。
さらに、数々のスポーツ現場を取材してきたスポーツコメンテーターから、指導者の食の知識レベルについて危惧していると話し、「末端まで正しい知識を届けるにはどうしたらよいのか」と問いかけました。これを受けて鈴木先生は、これまでに関わってきた日本のスポーツ組織への栄養指導や、アメリカのトレーニングセンターで見た、選手自身が食べるものを選ぶ習慣が根付いている事例を挙げながら、適正なものを適正量おいしく食べることの大切さ、食を我慢の対象にする日本の風習を変えることの難しさと重要性について説明しました。

質疑応答


閉会挨拶

閉会挨拶に立った小笠原悦子センター長は、本センター設立年度から、女子アスリートの成長過程に着目した調査研究が6年目を迎えましたが、世の中のニーズに対して挑戦的に取り組み、研究、啓発のレベルが上がっていることを痛感していると話しました。そのうえで、「“研究のための研究”をしているのではない、世の中を変えるために、女性スポーツ研究センターが存在している」と強調。そして、これらの研究がエビデンスベースであることに触れ、調査研究にご協力いただいた方々への謝辞を述べて、セミナーを締めくくりました。

閉会01

閉会02


託児ルーム

今回のセミナーでも、施設内に「託児ルーム」を設け、専門のスタッフを配置しました。小さいお子さんのいる参加者やスタッフも安心して、セミナーに参加していただきました。

託児ルーム

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