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Women in Sport

IOC 世界女性スポーツ会議

第1回IOC世界女性スポーツ会議

1996年、スイス・ローザンヌで「第1回IOC世界女性スポーツ会議」が開催されました。初のIOC主催となる世界女性スポーツ会議には、多くの国の代表や非政府組織、政府組織が参加しました。今後、スポーツ政策に関わる団体や政府関係者と協力し合い、女性とスポーツに関わる様々な課題にIOCがイニシアチブを取り進めていくことを表明しました。

第2回IOC世界女性スポーツ会議

2000年3月、フランスのパリで「第2回IOC世界女性スポーツ会議」が開催されました。この会議で、以下の決議文が採択されました。

本会議は、スポーツを通じて、平和なよりよい社会、そしていかなる差別もないオリンピックの理想の世界を築くというオリンピック・ムーブメントの目的を想起し女子スポーツを促進しようとする国際オリンピック委員会、各国際スポーツ競技団体、各国オリンピック委員会のリーダーシップを歓迎し、1996年スイス、ローザンヌで開催された第1回IOC世界女性スポーツ会議以来の業績を考慮し、ウィンドホーク行動要請、体育教育に関するベルリン・アジェンダ、ユネスコ・プンタデルエステ宣言での勧告を想起し、各地域、各国、各大陸、全世界でのスポーツにおける機会均等を確保するための多くの努力を認識することが表明されました。

第2回IOC世界女性スポーツ会議での決議

  • 国際スポーツ競技団体、各国オリンピック委員会、各国競技団体およびその他のスポーツ団体が、2000年12月31日まで に意志決定機関に少なくとも10%の女性代表者をおくという1996年IOC総会の決議の実現を促すよう、国際オリンピック委員会会長に強く要求する。また、目標に達しない場合、その理由を吟味し、実行計画書を提出させ、必要であれば、期限を2001 年6月までに延長するが、2005年までに女性代表者の構成率を20%にするという目標は、引き続き達成することを確認する。
  • 国際オリンピック委員会、国際スポーツ競技団体、各国オリンピック委員会に対して、2020年までの統括組織における女性代表者の構成率の達成目標を独自に設定することを要求する。
  • 地域大会、国際大会やその他のスポーツ団体における各国の代表団に、最低1人の女性代表者をおくことを国際オリンピック委員会が奨励することを要求する。
  • 国際オリンピック委員会に対して、とりわけオリンピック・ソリダリティー・プログラムを通じて、女性のリーダー、選手、指導 者、審判などのための奨学金や養成コースを増やすことを求める。特に、発展途上国の女性に対しては、スポーツにおける男 女平等に関する指導マニュアルなどの教育的資料を提供し、教育セミナーの開催を継続し、国内および大陸レベルでの研究促進を支持していく。
  • 女性地位向上委員会などの担当機関を通じて、政府に対して、健康、人権、教育、意志決定、女児の領域において、身体活動およびスポーツが女子および女性の成長に与える効果をうたった国連行動綱領(北京+5)およびその決定文書への認識を深めるように促す。
  • 政府間機関、特にユネスコに対して、女性に対する身体活動およびスポーツの発展に関するCEDAW(女性差別撤廃条約) の効果への理解を深めることを促す。
  • 国際オリンピック委員会委員およびオリンピック・ムーブメントに関わる他の委員に対して、質の高い体育教育の重要性への理解を深め、特に学校教育における女子の体育教育のための教育的資料の開発に協力するよう、働きかける。
  • すべての国内および国際スポーツ団体に対して、スポーツを平和維持および相互理解の手段として用い、戦闘地域ではオリンピックのための休戦を促すことを要求する。
  • 国際オリンピック委員会、国際スポーツ競技団体、各国オリンピック委員会、各国競技団体に対して、選手、指導者、スポーツ・リーダー、およびその他のオリンピック関係団体への行動規範を含んだ、セクシャル・ハラスメントに関する政策を施行、実施し、国際競技団体および各国オリンピック委員会が開催するすべてのワークショップおよび会議においては、このテーマを盛り込むことを要求する。
  • 女性やスポーツに関連する非政府団体に対して、関連する政府機関や地域、国内、国際レベルにおけるスポーツ・ムーブメントと提携関係を築き、プログラムの技術的なサポートを得ることを促す。
  • メディアに関連するすべての組織に対して、女子スポーツの正しいイメージおよび情報をより多く、より正確に伝え、女性ジャーナリストに対して、専用トレーニングプログラムを作ることを推奨する。
  • 国際オリンピック委員会および女子スポーツ・ワーキング・グループが、本世界女性スポーツ会議を開催したことを祝福する。
  • フランス当局、フランス・オリンピック・スポーツ委員会の協力およびホスピタリティーに対して、心から感謝を示す。

第3回IOC世界女性スポーツ会議

2004年3月に、モロッコのマラケシュで、「第3回IOC世界女性スポーツ会議」が行われました。会議では、「第2回IOC世界女性スポーツ会議」を振り返り、決議された内容に対し、女性とスポーツへの取り組みが遅れている現状が述べられました。これに対し、第2回会議で決議された、国際スポーツ競技団体、各国オリンピック委員会、各国競技団体およびその他のスポーツ団体に意志決定機関に少なくとも20%の女性代表者をおくというという目標を、引き続き達成することが再確認されるなど新たな戦略が表明されました。

第4回IOC世界女性スポーツ会議

2008年3月8から10日にかけて、ヨルダンの死海で、「第4回IOC世界女性スポーツ会議」が行われました。IOC女性スポーツ委員会委員長Ms. Anita DeFrantz氏の開会式の挨拶で「2008年の北京五輪で女性の参加が45%となる。もうIOCが女性のために何をするかが問題ではなく、女性がIOCやスポーツ界全体に対して何ができるのかが問題なのである。もっと責任を受け入れ、スポーツ参加の機会を追及する女性が必要であり、そのスポーツの機会を増やすためにメンター(助言者)として行動する女性(男性も)がもっと必要である。」という印象的な言葉がありました。またIOCのロゲ会長は、女性の役割をスポーツへの愛情を子どもたちに与える母親の役割として例え、その重要性を強調しました。

IOC女性スポーツ委員会委員長は、スポーツ組織の意思決定機関における女性の比率に触れ、女性が選ばれるにはどんな期待感が存在し、それを満たしているのかどうか、それぞれのポジションに選ばれるために何を満たせばよいのか、選ばれる能力はあるのか、もしないならばその条件を満たしている者が選ばれるように援助することなど行動を起こすことを呼びかけました。

1995年、IOCは1994年に制定された「ブライトン宣言」に署名しました。その後、IOC内に女性スポーツワーキンググループが設立され、次々と女性スポーツの改革を行ってきました。キプロスオリンピック委員会理事はこのことを紹介し、今後の女性のスポーツへの参加を増やすには、教育が重要であり、体育の時間の増加、オリンピック教育を通常の学校カリキュラムに盛り込むことなどを提言しました。

この会議では、これまでとは異なり、決議文だけではなく、アクションプラン(行動計画)がつけられ、具体的な内容が加えられ閉会しました。

第5回IOC世界女性スポーツ会議

2012年2月16~18日、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで、「第5回IOC世界女性スポーツ会議」が開催されました。この会議では、世界130以上の国々より、国内オリンピック委員会、国際競技連盟、非政府組織、大学などのスポーツ関連組織の代表者800名以上が参加し、スポーツ界における女性の参加促進を促す方法について様々な議論が行われました。
奇しくも2012年はアメリカで高校、大学のスポーツプログラムを女性に開放することを定めた「タイトルIX」の制定40周年と重なり、「一緒に、より強く:スポーツの未来(Together Stronger: The Future of Sport)」をテーマに活発な討論が進められました。

1日目は5大陸ごとに総会を設け、各地域のオリンピック委員会から女性スポーツに関する事例や活動報告と質疑応答が行われました。2日目は、「スポーツ界の女性リーダーシップ、進歩に向けたパートナーシップ、医学の重要性、教育を通じた女性・女子の支援」などのテーマで、3日目は、「ロールモデルとリーダーシップ、スポーツビジネス、女性スポーツとメディア」などのテーマでワークショップが行われました。

総会の中で、国際オリンピック委員会よりジャック・ロゲ(国際オリンピック委員会会長)は、「様々な理由(経済的・政治的・社会的理由)で女性のスポーツ参加が遅れているが、それを改善していかなければならない、 IOCは職員の20%を女性にする計画であり、また資金の94%を普及活動や発展途上国に費やしている。女性のスポーツ進出をサポートするメンター(助言者)を増やしていかなければならない」と意見が述べられました。また、アニタ・デフランス(国際オリンピック委員会女性スポーツ委員会代表)は、「スポーツは生まれながらにして持つ権利(Birth Rights)であり、この大切な権利を子どもたちの世代に受け継いでいかなければならない」と述べました。
さらに、オリンピックにおける女性アスリートの参加は、1900年のパリオリンピック(2.2%)から、2008年の北京オリンピックでは(42.4%)まで向上したことが報告され、女性の意思決定ポジションの参加についても、281 の組織が「ブライトン宣言」の採択、署名を行ったことがIWGに報告され、国際スポーツにおける女性リーダーシップの重要性が強調されました。

2月18日の閉会式では、ジャック・ロゲ氏(国際オリンピック委員会会長)は、今後IOCは、女性スポーツの更なる発展のために以下の項目を実現するとし、同会議の成果として「ロサンゼルス宣言」を発表し閉幕しました。

  • 女性のマネジメント・リーダーシップスキルの向上のためにより多くの資源の投資
  • IOCのリーダーシップにおける女性委員の最低人数の修正
  • 2012-13年におけるIOC委員の選定に関し、より多くの女性を選出
  • 関連スポーツ機関においても男女平等を実現
  • 男女平等の実現のために様々な組織、機関との協力を強化
  • 女性のスポーツ参加(競技、マネジメントともに)の促進
  • 国連との協力関係をより一層強化
「The Los Angeles Declaration(ロサンゼルス宣言)」英語版 「第5回 IOC世界女性スポーツ会議」議事録

第5回IOC世界女性スポーツ会議における各総会の報告

アフリカ国内オリンピック委員会連合(ANOCA)の総会

アフリカオリンピック委員連合の活動報告では、女性リーダーシッププログラムや女性自身の意志を促進するプログラムを用意し、女性のスポーツ界への進出をサポートすることの重要性、女性だけでやろうとするのではなく、男性の中に女性のサポーターを増やし、男性の声を通じて効果的に活動を広げていくことの重要性が述べられました。

ヨーロッパオリンピック委員会(EOC)の総会

ロザンナ・キフェティ(ヨーロッパオリンピック委員会)が、「女性アスリートのスポーツ参加率は上昇を続けているおり、北京オリンピックでは、女子の参加率が43%、ユースオリンピックでは46%、またロンドンオリンピックでは歴史上初めて女性が全ての種目に参加する」ことが述べられました。また、リーダーシップ、スポーツマネジメントにて女性の割合を増やすべきとの意見がありました。

オセアニアオリンピック委員会(ONOC)の総会

オセアニア地方の島々諸国を含む全体ミーティングを、IOC会議で開催するのは初めてのことであり、ONOCにとって歴史的な日ともいえる日になりました。オセアニア地域のスポーツ組織における女性理事の数は、世界的にも突出しており、今回のワークショップでは、17カ所の国内オリンピック委員会(NOC)より5分間ずつプレゼンテーションを行い、相互の活動に対する理解が深まりました。

アジアオリンピック評議会(OCA)の総会

ジャック・ロゲ(国際オリンピック委員会会長)は、「高いレベルの競技者だけでなく、草の根レベルの女性アスリートを増やしていかないといけない」と述べました。

現状として、女性オリンピックの女性選手の参加が進むよう、サウジアラビアの女性アスリートについても、現地オリンピック委員会としかるべき対応を取っている状況が説明されました。

パンアメリカンスポーツ機構(PASO)の総会

5つのグループに分かれて「女性とスポーツの発展における参考例」について話し合われました。2011年の「パンアメリカン大会」の男女参加率のデータをもとに、まだ平等ではないスポーツ17種目を選び、どのようにして男女平等にできるか話し合われました。

具体的には、国内・地域レベルにおいて、より女性が参加でき、競争できる環境をつくる、まだ新しいスポーツでは「資格基準」が高すぎるので低くする、「タレント発掘」を今の時点から行う、トレーニングへの奨学金制度、ユースゲームにおいて、より17種目のスポーツを積極的にサポートし、メディアを味方につけて、認識度を高める、優れている国と今後発展したい国が「シスターフッド」(女性同士の連携)を結ぶなどの提案がされました。

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