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「女性アスリートヘルスサポートセミナー2016」を開催しました!

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2016.02.29

「女性アスリートヘルスサポートセミナー2016」開催報告

“女性アスリートの身長をいかに伸ばすか”をテーマに平成28年2月11日(木・祝)「女性アスリートヘルスサポートセミナー2016」を開催しました。
平成26、27年度にスポーツ庁の「女性アスリートの育成・支援事業(再委託)」として実施した高身長女性アスリートに対する調査研究で得た情報を公表し、順天堂大学と西別府病院で共同開発した、成長期のアスリートをサポートするソフトウエア「スラリちゃん、Height!」を調査研究の成果物として発表しました。

1_挨拶_内藤先生

開会挨拶
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科長 内藤久士教授

第1部 基調講演

2_基調講演_松田先生

まず、独立行政法人国立病院機構・西別府病院スポーツ医学センター長で婦人科医長の松田貴雄医師(以下医長)が「成長ピークを予測してプラス4cm背を伸ばす」をテーマに基調講演しました。競技によっては、体格もあって、かつ機動力がある選手が世界を制する時代が到来しつつあるとして「日本も長期的な展望を持って選手を育成しなければならない」と語りました。両親の身長から導かれる「予測身長」が知られていますが、成長期の過ごし方によって4cmのアップは可能で、体格の大きな女性アスリートを目指せば、日本にも高身長といえる女性アスリートが増えると、様々なデータを用いて説明しました。
今回の調査研究で実施した150人近い高身長女性アスリートの成長歴(小1~高3)や、家族のデータなどを分析したところ、小学校の中・高学年から中学生にあたる第2次成長期に急激に背が伸びた女性アスリートたちに、ある特徴が浮かび上がりました。
○身長が急激に伸びるとき(成長スパート)、体重も急激に増加する
○初経年齢は比較的遅く、初経年齢を迎えるまで身長の増加は継続している
松田医長はプラス4cm背を伸ばすには、きちんと身長と体重を測定して〝成長スパート”に入ったことを見逃さず〝成長ピーク”に十分背を伸ばすことが重要だとした上で、背を伸ばすための大切なポイントを以下のように述べました。
 
○成長スパートより前の時期(一般的には小学校3~4年生)にたくさん遊ぶ(“おてんば娘”が丁度良い)
○成長スパートが始まる頃(小学校高学年)は、食事制限なく体を動かす
○成長のピーク時はひたすら食べて、できるだけ身長を伸ばす
○〝成長ホルモン”が背を伸ばす。質の高い十分な睡眠をとる
【注釈】
1)成長スパート
それまでの成長と比較して著しく身長が伸びる期間のこと。この期間は個人差があるが、9歳~12歳の約4年間(女子の場合)。

2)成長ピーク
成長率が最も高い(成長スパートの中で身長、体重とも急激に増える)1年のこと。成長ピークを迎えた後、その伸び率は下降し、2年ほどしか続かない。成長率とは1年間で身長がどれくらい伸びたかを表現した数値のこと。年間成長速度ともいう。
1年間で8cm伸びた場合は「8cm/年」と表記する。

3_会場1

第2部 パネルディスカッション

基調講演につづくパネルディスカッションでは、スポーツ栄養と睡眠のエキスパートが加わり「成長スパート」を見逃さずに「背を伸ばす」具体的な討議が行われました。
日本スポーツ栄養学会の前会長であり、神奈川県立保健福祉大学の鈴木志保子教授は「食事と睡眠を阻害するほどの運動をさせてはいけない」と話しました。長時間の練習で疲れ切ってしまって食事を取ることができず、十分な睡眠時間も確保できないようでは、成長が促されない、と強調しました。また、さまざまな栄養素のバランスがとれた食事をすることが基本ですが、ご飯などの主食をしっかり食べて、エネルギーの確保を優先させることも必要だと指摘しました。

4_パネル_志保子先生


5_パネル_葛西先生

睡眠の専門家で順天堂大学大学院医学研究科心血管睡眠呼吸医学講座の葛西隆敏准教授は、成長ホルモンを出すために睡眠時間は概ね10時間、そして質の高い睡眠を取ることが大切だとしました。中でも眠りに入ってすぐに訪れる深い眠り=深睡眠の重要性を強調して「寝付きよく、ぐっすり静かに眠っていれば深い眠りに入っている。深睡眠で病的いびきは少ない」と説明しました。

コーディネーターを務めた女性スポーツ研究センター副センター長で順天堂大学スポーツ健康科学部の鯉川なつえ先任准教授は、成長期に身長を伸ばすためには、ストレッチ・体操、ぶら下がり運動、スキップ・ジャンプ、水泳といった運動をすると効果的だと紹介しました。また、鯉川准教授は元五輪代表の高身長女子アスリートの成長歴を「スラリちゃん、Height!」によってグラフ化して紹介。松田医長が、身長が伸び体重が増えたタイミングなどについて解説しました。さらに、鯉川准教授はその選手が成長期に理想的な食事、睡眠、運動をしていたことを紹介し、パネリスト三氏がそれぞれの専門分野について解説しました。
満員の会場からは質問が多数寄せられ、まさに参加型のセミナーになりました。

6_パネル_鯉川先生


8_パネル2

9_パネル3

情報提供

セミナーでは、女性アスリートの成長をサポートするツールやコンディション管理をサポートするツールを紹介しました。

スラリソフト説明_関口

スラリちゃん、Height!ソフトウエア、スケールつきパンフレットを紹介
女性スポーツ研究センター関口晃子コーディネーター

eラーニング説明_池畑

ダイアリー、eラーニングを紹介
東京家政大学専任講師で女性スポーツ研究センター池畑亜由美研究員

・スラリちゃん、Height! ソフトウエア

両親の身長を入力して予測身長を設定。成長に合わせて身長と体重を入力していくと、似たような成長をした高身長の女子アスリートのモデルパターンが表示されます。また、成長スパートが始まったとき、体重が減少しているときなどにはメッセージが表示され、女子アスリートの成長スパートを見逃さないようサポートします。
女性スポーツ研究センターのウェブサイトからダウンロードできます
スラリちゃん、Height!

surari_icon

詳細はこちら

・スラリちゃん、Height! スケールつきパンフレット

成長期に必要な情報を様々な分野から解説した読み物になっていて、調査研究を通じて集めた高身長女性アスリートの体験談なども掲載しています。裏面は、キャラクターの女の子、スラリちゃんと一緒に成長していく身長測定用紙(スケール)となっていて、自宅で楽しく身長を測れます。
女性スポーツ研究センターのウェブサイトからダウンロードできます

スラリスケール


・女性アスリートダイアリー2016

diary

自転車、バスケットボール、バレーボールなどのトップアスリートも含め、すでに2000人以上が利用する女性アスリートのための手帳。基礎体温、体重、食事状況などの項目を1ヶ月分見開き1ページで記入できます。身体と心のコンディションを毎日書き込むことで、体調や心理面の変化を自己管理(セルフマネジメント)できるようになります。通常の手帳のように、合宿や大会などのスケジュールも書き込めます。
女性スポーツ研究センターのウェブサイトからダウンロードできます
女性アスリートダイアリー

・女性アスリートのためのeラーニング

女性がスポーツをする上で知っておくべき知識を学ぶための学習サポートツールです。全6章から構成されており、女性アスリート、また、女性アスリートを指導・サポートする方々、保護者に知っていただきたい知識を盛り込んでいます。パソコンやスマートフォンから、いつでも、どこでも、何回でも、学習することができます。動画終了後に行うクイズに挑戦することで、自身の理解度を確認することができます。
女性スポーツ研究センターのウェブサイトからご覧いただけます
女性アスリートのためのeラーニング

e-learning_image


小笠原センター長

閉会挨拶
小笠原悦子女性スポーツ研究センター長

11_会場2


今回のセミナーでも、施設内に「託児ルーム」を設け、専門のスタッフを配置しました。小さいお子さんのいる参加者やスタッフも安心して参加いただきました。

12_託児1

13_託児2

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